朔

ゴースト・トロピックの朔のレビュー・感想・評価

ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)
3.5
なんというか、ずっと、こころがぎゅっと、いたくって、主人公のように、主人公と同じように、胸のあたりを、ぎゅっと、ずっと、握り締めながら、みた。
作品としては、とてもすきだけれど、話としては、あんまりすきじゃないかもしれない。
なんだかわからないけれど、なんか、すごく、くるしかったから。
ああ、たぶんきっと、主人公にどこか祖母の面影を見てしまったからなのかもしれないと思う。
なんというか、傲慢なほどに善人。自分の善性を信じていて、他人の善性を疑っていない。時にはそれが、鬱陶しく感じることもある(いわゆる、お節介というやつ)。ただそれでも、もしくはそれゆえに、たしかな愛らしさがあって、どうしようもなく憎めない。
私は、そんな祖母に感謝があって、そんな祖母が大切で、なにより、好きだったから、だから、くるしかった、見ていられなかった、んだと、思う。
ただそのぶんだけ、ひしりとしたつめたさのなかで、ふわりとあたたかな、ひとの体温が伝わるときには、そっと救われるような心地になったりもした。
そう、本当に良い映画だった。特に映像は、その構図や構成は、すばらしいものであることに違いはない。
いつかこの作品の良さを、まっすぐに受け止められるようになったときに、また、もう一度、この作品と向き合うことができたらいい。
移民のこととか、は、正直あんまりわかっていない。言語も、文化も、環境も、いろいろ、違うから。それと、自分の不勉強もあいまって。
それでも、それとはまた違った視点から、いまにも泣き出してしまいそうなほどに、心をゆさぶられている。こんなはずじゃ、なかったのにな。
朔