“They call him Merlin Jones, the scrambled egghead. Merlin Jones the campus kook. But my heart’s whirlin’, I’m the girl in love with Merlin Jones!”
かの有名なシャーマン兄弟が作詞作曲し、アネットが歌ったこの曲は本作のオープニング曲として使われている。『ポピュラーソング・シンポジウム』(62)からも再利用されている紙で作られた奇妙なアニメーションでこの映画は幕を開ける。
1964年はディズニーにとって重要な年だった。『トゥモローランド』(15)で描かれた通りニューヨーク万博博覧会があったのだ。ディズニーはここでパビリオンを出展し、ウォルトの采配はパーク事業と映画事業共にそこまで行き届かないものになった。
と言っても映画事業はこの年『メリー・ポピンズ』(64)があり、『ウォルト・ディズニーの約束』(13)でも描かれている通り原作者の説得に難航した。当時のウォルトの映画への注力はおそらくそこにつぎ込まれた。この年の他の作品『霧の中の虎』(64)が微妙だったことからも伺える。
そんな中公開されたこの『ツツぬけですピタリ一発』は、当時のディズニー番組「Walt Disney’s Wonderful World of Color」の中の映画コーナーの一編になる予定だった。45分ほどの尺で2本のシリーズになる予定だったものを一つの映画にしたのだ。なので、この映画はメドベール大学の学生マーリン・ジョーンズが起こす災難を読心パートと催眠術パートの2つのパートに分けている。
トミーカークのコメディ役者としての才が発揮されながら、アネットもそれに便乗してかなり様子がおかしい。ディズニー初期を代表する役者がとことんふざけまくるとても面白い作品に仕上がっていた。