リンコロシネマ

MONTEREY POP モンタレー・ポップのリンコロシネマのレビュー・感想・評価

5.0
【これを体験せずしてロックは語れない】by高田漣

何故か日本では未公開だった貴重なロック・ドキュメンタリーがようやく公開された。私の住む静岡県東部では比較的小さなシネコンであるジョイランドシネマみしまにて上映されている。

この劇場、普段はメジャーな作品ばかり上映しているのだが突如こういったマニアックな音楽の映画を上映するので目が離せない。支配人が音楽好きなのかな?

私が入院している間にもCCRのドキュメンタリーがかかっていて観に行けなかったことを悔やんだ記憶がある。

上映してくれてありがとう!ジョイランドシネマみしまさん!!

モンタレー・ポップ・フェスティバルとはフラワー・ムーブメント真只中の1967年6月16日から18日までの3日間、アメリカはカリフォルニア州のモンタレー(モントレー)で開催された別名“サマー・オブ・ラブ”と呼ばれる文化的・政治的な趣旨を伴うヒッピー中心のフェスティバルであり、

この映画『モンタレー・ポップ』はその模様を当時ダイレクト・シネマ(音と映像を同時に収録する手法)=シネマ・ヴェリテ(映画をより真実に近づけようとした一派)の旗手であったD・A・ペネベイカーがフィルムに収めた歴史的見地からみても極めて重要なドキュメンタリー作品である。

まさかあのジミヘンのノイズとハウリングにまみれたクレイジーかつワイルドなギターサウンドが映画館の音響で聴くことができるなんて…生きていてよかった!

登場するアーティストは以下、

◆ジャニス・ジョプリン ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニー
◆スコット・マッケンジー
◆ママス&パパス
◆キャンド・ヒート
◆サイモン&ガーファンクル
◆ヒュー・マセケラ
◆ジェファーソン・エアプレイン
◆エリック・バードン&ジ・アニマルズ
◆ザ・フー
◆カントリー・ジョー&ザ・フィッシュ
◆オーティス・レディング
◆ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス
◆ラヴィ・シャンカール

このステージでジャニス・ジョプリンは一躍スターダムにのし上がり、ジミ・ヘンドリクスはアメリカでの成功を手に入れ、オーティス・レディングは人種という垣根を超えてロックスターの仲間入りを果たし…このときジャニスとジミヘンは24歳、オーティスは25歳…音楽家としてもパフォーマーとしても才能が凄すぎる!

モンタレー・ポップ・フェスティバルは“ロックを芸術にまで昇華させよう”という思惑とともに“反ベトナム戦争”という当時のカウンター・カルチャーの象徴のような主旨で開催された。そんな会場からはピース(平和)で溢れていた模様がハッキリと映像に映し出されている。

ロック中心のフェスではあったが文字通り人種やジャンルを軽々と飛び越えた素晴らしいイベントであることがスクリーンから伝わってくる。

繰り返し述べるがこの映画は本来ロックが持っているエネルギーに満ち溢れ当時のカルチャーを見事に切り取った作品であることに間違いはない。本作は2018年、アメリカ国立フィルム保存委員会により「文化的、歴史的、また芸術的に重要」ということで半永久的保存推奨作品にも登録されている。

コンサートのハイライトとなるのはシタール奏者のラビ・シャンカール。タブラ奏者の人も凄かった。演奏が終えた後、私以外に誰もいない劇場でスクリーンの中の観客と一緒に思わずスタンディング・オベーションしてしまった!映画を観た人なら私の気持ちが分かるはずである。