映画ケーン

空飛ぶゆうれい船の映画ケーンのレビュー・感想・評価

空飛ぶゆうれい船(1969年製作の映画)
5.0
町山さんがオールタイムベストに入れていた子供向けアニメで、「子供向けでこれやるか?」って何か突出した表現、特に残酷描写、ホラー描写がえげつないみたいなのがあるのかと思って(ワクワクして)観た。

そしたら、予想と全然違った!!
タイトルからも「幽霊怖い」映画かと思うんだけど、もっと怖いものがあった。

それは、政治的な内容。軍需産業と政府が手を取り合って、国民を扇動しているという内容。更に、国民に中毒性のある「ボア・ジュース」を消費させる事で兵器の資金調達していた。

それを子供向けアニメでやってる辺り狂ってて好き。『ウォーリー』も子供向けで子供向けじゃない事(ディストピア)をやった映画だけど、それ以上に「子供向けじゃない」感とそれによる恐怖が凄まじい。
序盤で両親が死ぬあたりもヒドい。

政府が裏で何してるか分かんない。何してても分かんない、って感じは『新聞記者』に似てるんだけど、『新聞記者』はあくまで、それを発見する”だけ”(語弊が無い様に言うけど、だからダメとか言ってる訳ではない)。気付くのが新聞記者と内調の官僚で、市民ではない。

でも、今作では消費者(僕ら)が利用されてるって視点も入ってるのが嫌な感じ。キャンペーンに当選したいから「ボア・ジュース」を沢山飲んで(しかも中毒性がある)、知らず知らずのうちに軍に資金を回していたってのが、とてつもなく恐ろしい。
で、上手いのが、主人公が最初と途中でジュースをガブガブ飲んでて、テレビでジュースのCM(このCMも怖い)を見てるんだよね。そこで更に主人公は「ええい。今良いところだったのに」って、気付いていない。
だから、より一層、気付いた時の恐怖感が強まってる。ジュースとそのCMは何かしらあるだろうって思ってたけど、僕も全然気付かなかったから、衝撃受けた。

で、ラスト、主人公の”少年”が、神風特攻隊のごとく自らの命ごと船を敵基地に突っ込んで爆発しようと考えるあたりも恐ろしい。
ただ、それに対して「自分の命を投げるのはやめろ」とストレートな返しがあるが良い所。

やたら説明的なセリフ、モノローグも一周回って愛らしい。

と、それら政治的なテーマをたった60分にまとめてるのも凄い。
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