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トラペジウムの多摩のレビュー・感想・評価

トラペジウム(2024年製作の映画)
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90分アニメなので異常にトントン拍子ではあるんだけど、番組の企画ユニットという規模感が程よかった。
本気の憧れからくるストイックさや若さからの全能感に基づいるのであろう行動力、歳相応の視野の狭さを軸にした青春ジュブナイルが、スコセッシ映画の栄枯盛衰のようなスピード感で展開されて心地良い。
自分の限界に気付いて、セルフプロデュースで周りを巻き込んで物語を作って「瞬間接着剤みたいに」くっついていくパートは、不安もありつつ着実に夢へと近づく気持ちよさがあった。
全てをコントロールしている気になって、実際多少のつまづきはありつつも概ね計画通りに事は動いていく。
恵まれた環境にあって貪欲に願いを追求しようとせず、目新しい体験を受け身で楽しむ南。
秀でたものを持っていながらそれを誇示しようと思わず、人と関わる楽しみを知った人見知りの西。
あまり自信を持てず確固たる自分を持たない、ヒーローだった東ゆうと一緒に居たかっただけの北。
東ゆうという人間を対照的に浮き彫りにする全員が青春の思い出作りくらいの温度感で活動に臨んで、ストイックに憧れを追求する東とは結局最初からすれ違いがあった。
特に「南さんさぁ、苦手なら練習すれば?」みたいな事言うシーンは態度もさることながら、最初に出会った時の部活での卑屈な独白への接し方と対応していて印象的だった。
圧で抑え込んでいたすれ違いも限界を迎えて、呆気なく瓦解して、しっかり塞ぎ込むし煽ってくるクラスメイトには言い返せずにいられない。
徹底したセルフプロデュースに基づいて動く東ゆうは利己的でドライのようにも見えるし自覚的にそう振る舞ってる部分もあったのだろうけど、その辺はドライな性格というより単に歳相応の余裕の無さであったりもするんだろうなと思った。緊張してる時?に首筋に触れる癖が結構挟まれるし。
オーディション全落ちを入れたら二度目の挫折を味わって、全部終わった気になってた所に「これからどうするんだい」と言われてまだまだ続く未来に気付くシーンはさながらキッズリターンのようで、各々が自分にとって本当に大事なものを見出すそこで終わりでも十分満足だった。
それを勝ち取って終わるのはやっぱり気持ちが良い。
ボランティアの爺さんの声が一人明らかに変だったのがちょっと気になった。
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