ぶみ

ブリックレイヤーのぶみのレビュー・感想・評価

ブリックレイヤー(2023年製作の映画)
3.5
アメリカの破滅を阻止せよ。

ポール・リンゼイがノア・ボイド名義で上梓した『脅迫』(The Bricklayer)を、レニー・ハーリン監督、アーロン・エッカート主演により映像化したアメリカ、ブルガリア、ギリシャ製作のサスペンス・アクション。
CIAの仕業に見せかけた記者殺人事件の真相を暴こうとする元CIAエージェント等の姿を描く。
原作は未読。
主人公となる元CIAエージェントのレンガ職人・ヴェイルをエッカート、容疑者でヴェイルのかつての同僚・ラデックをクリフトン・コリンズ・Jr、ヴェイルとともに捜査を行うこととなるCIAエージェント・ケイトをニーナ・ドブレフが演じているほか、ティム・ブレイク・ネルソン、イルフェネシュ・ハデラ等が登場。
物語は、ラデックが容疑者として浮上したことから、かつての同僚でレンガ職人(=ブリックレイヤー)として働くヴェイルに白羽の矢が当たることとなり、冒頭、ヴェイルが職人として働くビルの屋上で突如銃撃戦が始まるシーンがあるのだが、これがなかなかのクオリティであり、いきなりエンジン全開な印象。
そもそも、余分なことは一切廃され、ファーストカットからいきなり物語が動き始める様は、説明過多に陥ったり、日常の何気ない光景を丁寧に描くような作品が多かったりするなか、非常に潔いものであり、まさに古き良きサスペンスの味わいとなっている。
以降、スパイものらしく、各地を転々としつつ変装しての潜入捜査、メルセデスAMGのCLSによるカーチェイスに銃撃戦、肉弾戦、はたまた派手な爆発と、この手のサスペンス・アクションとして定番な展開を余すことなくやってくれるため、これはもう90年代に『クリスハンガー』や『ディープ・ブルー』といったエンタメアクション作品を繰り出してきたハーリン監督らしいものである反面、アクションシーンでのカメラの手ブレが激しく、かつカット割が多いため、何が起きているのか全体像がわからないことが多々あったことと、タイトルにもなっているレンガ職人らしさがあまり活かされていなかったのは残念だったところ。
手垢がつきまくったB級作品と侮るなかれ、映像にチープさは微塵もなく、この手の作品で期待しているものを過不足なく見せてくれ、昨今中途半端に社会問題を提起してきたり、芸術性が高く理解不能な作品が少なからず散見されるなか、このエンタメ感抜群な肌触りはもはや貴重であるとともに、燃え盛る建物を背景にヴェイルのシルエットが浮かび上がるシーンに身震いした一作。

グリズリー・パインズで会おう。
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