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Civil War(原題)のPalakのレビュー・感想・評価

Civil War(原題)(2024年製作の映画)
3.5
先日引退報道が出て狼狽えたアレックス・ガーランドの最新作。ちなみに引退は誤報で、今後脚本に集中したい(≠監督やらない)とのことでよかった。

これまでサイコロジカルなSFを描いてきた監督の、設定はフィクションとはいえかなり現実に近い世界を描いた戦争モノ。イギリス出身の彼だが、だからこそかなりシビアに現実の延長線上としてのディストピアなアメリカをシニカルに、痛いくらいの緊張感と爆発音、銃声たっぷりに描く。戦争モノとして戦場の写し方はかなり上手く、本当にこの人なんでもできるんだなという感じ。

ニューヨークからぐるっと西に遠回りしてワシントンまで、米国各地で出会う様々な、フィクションとして楽しむには現実に近すぎるアメリカの暴力性を巡る地獄のロードムービー。
なかでもやっぱりジェシー・プレモンスの存在感はすごい。彼と主人公のひとりとの会話で、アメリカ人なら誰もが口にせずとも揺るがないセーフワードとして信じているであろう「I'm American(私はアメリカ人だ)」というセリフに対し彼が放つ「What kind of American are you?(どんなアメリカ人だ?=何系か/移民か否か)」の破壊力よ。

正直なところこれまでの監督作と比べてキャラはかなり浅いというか、これまでのように主人公の内面と置かれた環境がシンクロしてドロドロになっていくような深さはほぼなかったものの、どちらかというと主人公がフォトジャーナリストであるように、その世界で起こっている事件、惨劇を客観的に写すことを目的としていたのだと思う。

アメリカ内戦は設定として全然新しいものじゃないけど、この映画の作りもあるがこの設定がフィクションとして楽しめなくなってる現実の方がなかなか恐ろしい。
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