Monsieurおむすび

薄氷の告発のMonsieurおむすびのレビュー・感想・評価

薄氷の告発(2023年製作の映画)
3.7
薄氷の告発
韓国スポーツ界の性暴力とパワハラ、その隠蔽体質に至るまでの根深さ、なにより被害者を好奇に晒すメディアや司法、大衆による二次被害のグロテスクが際立つ。
フィクションではありながらも、モデルとなるような実際の事案もあり、考えただけでも気分が暗くなる。
作中では自身の被害を封印していた主人公が、元同僚や教え子に触手が及んだことで交戦しようとするのだが、悉く選択を誤り悪い方へと展開していく流れにストレスがたまる。
しかし、これこそが被害者を更に追い詰める風潮なのかもと思わされた。
現実世界でも誰かの生命が絶たれたり、社会問題になってもきっとトカゲの尻尾切りのような決着で、根本的な改善には程遠いのが実状だろう。
本作も主人公の完全勝利という甘い結末は用意されておらず、スカッとしたいい気分で観客を酔わせようなどという趣向は一切ない。寧ろ、この苦い結末のその先を委ねられ、託されているように思える。
直接的ではないにしろ観ていて辛くなるシーンや、そういった問題提起の重みにズシリと心に負荷のかかる作品だった。
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