このレビューはネタバレを含みます
面白くはあるんだけど、見てて心踊らなかったのが正直な感想。実在するラッパーの話という事前情報からは想像もつかないような逆サクセスストーリーで笑った。若気の至りで薬を売ったり、暴力に走ったりするのは分かるけど、ある程度年齢を重ねてから音楽事業を始めたいがために裏稼業に手を染め、失敗したらまた別の裏稼業で取り戻そうとする負のスパイラルがとてもじゃないけど実話とは思えない。青年期のジワの暴力シーン、引きで見せるけど流れている音楽がビートを刻んでいるからか、そこまでドライさが無く寧ろ熱を感じるのが斬新で面白かった。何回も割り込まれて全然金強奪計画が上手くいかないのも笑いを堪えるのが大変なくらい笑った。
幼馴染とも終盤までは全然上手くいかず、挙げ句の果てに金強奪がバレて捕まるクライムストーリーとしての側面が良かった分、最後の方は大きく飛躍してちゃっかり大成功を収めた人の話になっているのが残念。出所してからの話も見たかった。
もう一つ自分がイマイチだったなと思うのが、音楽に対しての描写が薄いと感じた点。彼の音楽に対するこだわりや執着が足りない気がする。初犯前にジワがヒップホップに惹きつけられる描写はあったが、それ以降は犯罪映画に徹してしまっているので、彼が抱く熱が蔑ろにされているように見えた。個人的には見ながらそこに期待していたので、若干肩透かしを食らった気分。
