深澤うろこ

水深ゼロメートルからの深澤うろこのネタバレレビュー・内容・結末

水深ゼロメートルから(2024年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

どう評価すべきか悩む作品だった。
主題は非常に今日的で、それを「ありふれている」という言葉で済ます気にはなれない(なぜなら社会があまりにも変わらないから誰もが同じ問いを立てずにはいられないのだろう)。
しかしその主題が、会話劇を繰り返しても一向に深まらないのが残念だった。たとえば『ウーマン・トーキング』のようにガツガツと掘っていく感じがしない。観る人の多くが「そういうことってあるよね」以上の感情を抱きにくいのではないかと思った(個人的にはジェンダー問題やフェミニズムに関心があるからそれなりに見入ったけれど)。
それと、終盤人物が叫んで心情を吐露するというのは、作劇としてかなり上手くないのでできればやめた方がいいと思う(演劇では映画以上に使われる文法ではあるけれど)。特に、その切実な心情の吐露がただ空虚に響いてなんら解決をもたらしていないので、「え、なんか話終わった風になってる…」と置き去りにされた気分だった。

賽の河原のように終わらない砂集めという理不尽な作業に対して一応不満をぶつけはするけれど、教師のよく分からない理屈で終わってしまっているのも気になった。設定としてとても面白いだけに勿体ない気がした。教師が友人?と電話するシーンなどを盛り込んだわりには彼女の抱えるものも未消化なままだった。

登場人物たちがそれぞれに対して辛辣なことを言ってはそれに対するフォローがほとんどないまま進んでいくのもキツかった。それゆえに誰にも感情移入できないのだ。
特に「女を言い訳にしているだけ」という類のセリフは、なんらかの反論が無いと、作者の意図と関係なく多くの誤解を生んでしまう。作者自身がそう思っているというのであれば何も言えないですが……。

と、かなり辛口な感想を書きました。(当時)現役
高校生だった方が書いた脚本としては確かに賞をとるだけのものがあると思います。が、そんな忖度された評価は若者を舐めてるみたいだし、誰も得しないと思うので一応思ったことをそのまま書くことにしました。
深澤うろこ

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