ご機嫌な黄色

ヴェルクマイスター・ハーモニー 4Kレストア版のご機嫌な黄色のレビュー・感想・評価

4.5
‘漆黒の黙示録’なんて見たけれど、
なんとも心地良い夢見心地な(そのくせ眠気とは全く無縁な)優しさのある芸術作品でした

柔らかな荘厳
破滅の美学が観たものを融解させる
崩壊というより、とろんと。
強度の極まった瞬間の連続である長回し
凡人の時空にはここまでの強張りはないし、包容力もない
いつ止めても完璧に美しい画
根源的カオスにある平穏はピタゴラスよりもなお古い、
即ち、タル・ベーラのもたらす146分の皆既日蝕
ざわつきは静寂となり、また陽がさせば、感情はより豊かになっている

ラルス・ルドルフ演じるヤーノシュは優しく無垢であるから、作り物(※追記、私は勝手にそう思い込んだのですが、パンフには張りぼて、死骸、本当のクジラではない、等の表現がなされており、剥製に近いものだったのかもしれません)のクジラの瞳に創造主をえたが、
妥協の平安をよしとした老音楽家エステルにはどう映ったのだろう
全てを見ていたそのクジラの瞳はヤーノシュが愛した宇宙にあまりにも似ていた
「お前のせいだぞ、ずっと無害だったのに」
何かのせいにするなら、クジラでも扇動者でもなく、この作品唯一の悪夢であるクソガキ二人だろう

初見でした
やっぱり、男がひたすら平行移動をするのを見ることになりましたね
ご機嫌な黄色

ご機嫌な黄色