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ピアノ・レッスン 4Kデジタルリマスターのnomiのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

試写会で観ました。感想を書く前提で見たから普段よりかなり集中して鑑賞できた気がする。

最近アイドルのルセラフィムのことを調べている中で「青髭の妻」のことを初めて知ったので、この作品の劇中劇として登場したとき「青髭の妻だ…!」と思えた。ルセラに感謝…。
青髭の妻は禁忌を犯すモチーフだから主人公との類似性があるというか…この描写に限らず示唆的な場面が沢山あるし、あらゆる場面で対比がすごい。
試写会のオープニングトークで演出が練りに練られていると聞いていたけど、本当にそうだった…練りに練られているし、物語の構成がものすごく綺麗だった。
綺麗な構成って、少しの匙加減で退屈な展開になりそうな気がするのに「ここからどうなっちゃうの…?!」と何度も思わされた。

他の方の感想で エイダは女性の欲求というより、生物としての欲求に正直な人ということを書いていたのを読んでしっくりきている。
最後の海に落ちるシーンは、あれは、あの瞬間はピアノと心中したくてわざとロープに足絡ませたのかな…と思った。心中まではいかなくても、あの瞬間ピアノが沈んでいくことが悲しいような表情に見えた。海に落ちたのも最終的に生きようとしたのも、自分で選択している気がした。
他人や環境による影響もあるから、本当に全てをエイダが選択できているか…というのはあやしい気がするけど、家父長制が強いあの時代の女性として…とかは関係なく、エイダが個人の生物として自分で選んで物語が進んでいく様がよかった…ように思う。

最終的に3人で幸せそうになっていたけど、ニュージーランドでは主要人物全員(特にスチュアート)「こんなはずじゃ…」と思っていたような気がする。
序盤こそエイダへの対応が酷くて「スチュアートさぁ…」とか「エイダに対する感情はなんなの…?」とか思っていたけど、途中から可哀想に思えてくる。
エイダが本当のところどう思っていたのかは分からないけど、多分スチュアートが聞いていた心の声は的を射ていたような気がするし…。彼なりに分かろうとしていたのではないか。
妻になった人から嫌われてるんだろうな…と感じつつ歩み寄ってるの、立派だと思う。指切り落とすくらい怒る場面、エイダにそんなに愛情を持っているのか、それとも愛情というより裏切りに対して怒っているのか分からなかったけど…妻の指を切り落とすような凶行に走ったことも含めて、気の毒に思う。
もちろん斧や銃を人に向けたり妻の指を切り落としたり他にも様々な暴力を振るっていたのは最悪で寛容になるべきではない。でも、エイダと家族としてうまくやっていきたい気持ちはあった気がする…。

逆にベインズの方が何を考えているのかよく分からなかった。
オープニングトークで「スチュアートは初対面のとき自分やエイダの見た目を気にしてばかりでエイダの心情を気にかけなかったけど、ベインズは彼女の表情を見ていた」と聞いていたのもあって「ベインズはエイダを気にかける紳士」だとなんとなく鑑賞中思ってたけど、いや…紳士では…なくないか…?と思った。
最終的には同意を得てるけど、仕掛けてる時点でそれは暴力じゃないかと思う。

恋愛や性愛の色が強いのもあって、物語が自分に刺さったかと言われるとあんまり刺さってはいない。
共感したり、自分のためのお話だとかは思えないけれど 物語として巧みですごい映画だと思ったし、すごく勉強になった…。
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