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オーメン:ザ・ファーストのnetfilmsのレビュー・感想・評価

オーメン:ザ・ファースト(2024年製作の映画)
3.8
 『ハロウィン』や『エクソシスト』や『ゴースト・バスターズ』のまさかのフランチャイズ・シリーズの華麗なる復活に接し、もはやどの方向から何が来てもおかしくないアメリカ映画2024年の世界線にまさかの『オーメン』大復活にはいやはや驚いた。想像主である名匠リチャード・ドナーは数年前に鬼籍に入り、ある意味お伺いを立てねばならない人々が亡くなったタイミングでリブートというのが現在の倫理観なのだろう。然し乍ら忘れてはいけないのが2006年の中途半端な『オーメン』リメイクの『オーメン・ストーリー』である。ベイロック夫人に『ローズマリーの赤ちゃん』のミア・ファローをキャスティングした辺りはなかなか小粋で良かったのだが、リメイクとしては中途半端な仕上がりで、『オーメン』原理主義者の失笑を買った。今回の新シリーズの始まりは1のリメイクではなく、前日譚である。イタリア・ローマのとある教会。修道女になるためにやってきたアメリカ人修練生マーガレット(ネル・タイガー・フリー)は、修道院に預けられた少女カルリータ(ニコール・ソラス)と出会う。彼女の周囲ではなぜか不自然な連続死が起こり、彼女がその元凶とされていた。

 悪魔の子、ダミアンはなぜ誕生したのか?、、、という大仰な謳い文句の割にはそもそもが序章にしては丁寧に物語を紡ごうとし過ぎている。だが共にイタリアが舞台で、同じような始まりを遂げるポール・ヴァーホーヴェンの『ベネデッタ』やルカ・グァダニーノ『サスペリア』はどちらも抜きん出た作品だっただけに今作は分が悪い。序章で言えばどうして118分も使ったのか疑問で、この内容ならば90分で十分だろう。孤立するカルリータに過去の自分を重ね合わせたマーガレット辺りの、ある種のミスリードを誘発するシスターフッド的な連帯のくだりは今流行りの展開ではあるものの、いかにも先が見えてしまう。果たして教会が悪いのか?それとも主人公が悪いのかという問いが反転する辺りも脚本としてはあまりにも芸がない。むしろ驚きという部分では健闘しているのがビジュアル的な視覚効果だろう。70年代の石畳のローマの街並みをある程度再現していて見応えがある。炎上からの落下や、壁に串刺しの場面も主人公の視線をそこに注力させた上で決定的な恐怖を引き起こす。つまり新人ながらその辺りのタメは作れる監督なのだが、それでもこんなもんだよねという感慨しか抱けない。しかしジェリー・ゴールドスミスの劇伴が流れ、グレゴリー・ペックの写真には言いようもないカタルシスを感じてしまう。だけどこれ、続編はどうアレンジしても想像の範疇を超えてこないと思うのだが。
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