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オーメン:ザ・ファーストのくりふのレビュー・感想・評価

オーメン:ザ・ファースト(2024年製作の映画)
3.5
【推しの子と、推せない子】

視野外だったが、ある評を読んで惹かれて劇場行くと、予想外に技ありで感心した。ネタは古いが、語り方に鮮度がある。

70年代のローマが舞台だが、白人キリスト教ナショナリズムが高まる現代米国の映画、と明らかに刻印されている。で、最近作で例えると、オカルト版『コール・ジェーン』だよねコレ!www

神も悪魔も絵空事だから今さらコワくもない。そこで本作はオカルトホラーから、女性が身体の自己決定権を奪われ、蹂躙される恐怖へと重心をスライドさせている。

それを女性監督が描いたことで、より嵌ったのでしょう。飛び抜けて怖いのが、幾つかある出産絡みのシーンだしね!生々しくて、描写も何故か執拗なんだわ。ダミアン様降臨血祭りって意図だろうか?

悪魔とはキリスト教が生んだもの、という事実wをちゃんと描いたのはいいよね。映画向けに、荒唐無稽な計画に変えてあるが、彼らが世界を搾取すべく暴走してきた現実は、史実が証明している。恐ろしいのは、布教でなく支配が目的らしいことで、現代でも、貧しい国へ着々と入り込もうとしている。

一方、米国社会では白人キリスト教徒の割合が着々と減っているそうで、その不安が本作の背景にはあるのでしょう。まだまだ特権に守られているだろうに、その特権を奪われることは、怖いのだろうね。

オリジナルの本筋は守りつつ、ホラーショーとしてネタを変奏させているのはナカナカ美味しかった。特に、首吊り・首チョンパ・串刺し、の三点セットをこう曲げてきたか!と可笑しかったよ。

主演のネル・タイガー・フリーは、まだあまり見ない顔で、新鮮でよかった。あの役も、ファイナル・ガールの変奏・進化と言えると思う。あれだけ股のチカラが凄いヒロインってば!男じゃ描けん!www

所詮はフランチャイズ・シリーズの一本、という質に収まるが、これなら続編も見ようかな?と思えました。ダミアンの物語が、まさか女性主導へと語り直されるとは!…時代の変わり目、いい方のやつだ。

ところで最後、グレゴリー・ペックの写真を出して来たが、あの役、どうするのだろ?

<2024.4.16記>
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