主役を演じる藤純子のようなあんな美人が三流の馬賊芸者なんかやるかというリアリティの無さはともかくとして、全盛期の藤の日本美人的な美貌や洗練された演技を全編で堪能できる。ましてや監督が藤に惚れ込んでいる山下耕作なだけに必要以上に丁寧に撮っている感がある。
話の内容はいつもの任侠映画のパターンだが、藤は単なる芸者なので荒っぽいことには加わらずゲスト的主演の高倉健がその役を一手に引き受けるのが新味。そのためかいつもの『緋牡丹博徒』シリーズに比べるとメロドラマ要素が強くなっている。
ラストの殴り込みに加わる高倉と彼を案じながら踊りを舞う藤を交互にカットバックさせ、お互いに命を賭して戦う姿を美しくはかなく魅せていくシーンはこの映画でしかなし得ないであろう名シーン。そしてラスト、全てを乗り越え素っぴん状態で化粧をする藤の覚悟を決めた表情の壮絶な美しさ。
ちなみに序盤で芸者たちと踊りを舞うシーンがあるが、藤さんめっちゃ楽しそうに踊っているのが印象的。演技よりこういうダンスみたいなのが好きなのかな。