むぅ

テレビ大阪ドキュメンタリー映画「おまえの親になったるで」のむぅのレビュー・感想・評価

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最も大切な部分は、
「加害者の支援」が目的なのではなく、「これ以上被害者を増やさないこと」が目的である、という点かと考えます。

私は、被害者遺族である草刈さんがなぜ加害者の支援をするのか、そのことに興味を持ちこの映画を観ました。
そして、草刈さんが上記のことを語るのを聞いて、腑に落ちました。

日本では、被害者より加害者保護の方が手厚い、という話を聞いたことがあります。
私は、何よりも保護すべきは被害者であると思います。
この映画を通して、加害者の支援は被害者を減らすことに繋がる、という視点を得ることができました。
しかし、この目的意識は履き違えずに持つべきであると強く思います。
(=寄り添うべきは、何より被害者であるということ)

正直、目を逸らしたくなるようなシーンは多かったです。草刈さんに助けてもらっても、また罪を犯す、迷惑をかける様子を見て、「やっぱりか」「なんなんだよ」と思ってしまう自分がいました。

確かに、親から暴力を受けたりして不遇な環境に置かれていた子は、その点では被害者です。
しかし、罪を犯したことは紛れもない事実であり、私は同情しません。(できますが、してはいけないと思います。)
これもよく言われることですが、不遇な環境でも罪を犯さず生きている人はたくさんいるからです。

(不遇であることを罪を犯した理由とするならば)彼らに同情すべきではないと思うものの、
彼らが更生を望み、自ら助けを求めるならば、
その機会を与えて助ける存在(機関)は必要なんだろうなと感じました。

私はこの映画を観るとしても、元受刑者と関わろうとは思わないし、支援に参加しようとは思わないのが本音です。
だからこそ、草刈さんが映画の中で何度か言っていた、「誰かがやらなあかんから」などという言葉が印象的でした。

まさに監督が訴えていた、「この人たちだけに任せていていいのか?」という問題意識は、この言葉を通して感じることができました。
一般社会は簡単にこういった人を見放しますし切り捨てますが、その後、その人たちがどうなっていくのか、また、誰が面倒を見るのかは、考えません。(考えても、何も利益にはならないからです。)
しかし、人情論ではなく、この国の秩序を守るという意味で、社会全体として彼らのことを見放すことはできないのか……と感じました。
その役割を担ってくれている人がいるんだ、とわかりました。

かと言って、犯した罪の大きさや種類によっては、更生という言葉を当てはめて考えることができない場合もあると思います。
つまりは、殺人です。
殺人を犯した人に向けて「更生」という言葉を使えるか?聞いてみたかったです。
(舞台挨拶で質疑の時間がありましたが、さすがに、聞けませんでした。)
むぅ

むぅ