あかぬ

プロミスト・ランドのあかぬのネタバレレビュー・内容・結末

プロミスト・ランド(2024年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

雪がまだ溶け切らぬ春。マタギの伝統を受け継ぐ山間の過疎集落であるこの町では、古来から熊狩は神聖な儀式とされており山神を信仰するマタギたちにとって欠かせないものであった。
高校を出て家業の鶏舎を継いだ主人公・信行は、この土地の閉鎖的な暮らしに嫌悪感を抱きながらも人生の目的を見つけられず、ただ毎日を無意味にやり過ごしていた。
そんなある日、マタギ衆の集いで熊狩を指揮する親方・下山から、役所から今年の熊狩りを禁止する通達が届いたことを告げられる。近年の熊の減少を鑑みての決定で、違反すれば密猟とみなされマタギとして生きる道を閉ざされてしまう。町のマタギ衆は仕方なくその決定に従うが、信行の兄貴分である礼二郎は頑なに拒み続ける。やがて礼二郎は信行を呼び出し、2人だけで熊狩りに挑む秘密の計画を打ち明ける……。
自分の進むべき道を理不尽に閉ざされ、それでも信念を貫き熊討ちに賭ける男と、それに付き添う若者を描く2 人の男の物語。

本編上映前に舞台挨拶で監督と役者の方々のお話を聞いた。関西弁で柔らかいしゃべり口調だった三浦誠己さんは主人公の父親役を務めているが役とのギャップが凄まじく、全く不自然さを感じない強い東北訛りと同一人物には見えないほどの恐ろしい顔つきに強い衝撃を受けた。あれは凄い。
本編に登場する熊はCG・人形・本物で使い分けており、主人公たちが狩った熊を解体する”けぼかい“と呼ばれる儀式のシーンでは本物の熊が使用されたそう。

禁じられた熊狩をしに行くということは、意味は違えどふたりにとってのけじめであったのだろう。この町に生きる道を見出していた礼二郎は町を離れる選択をとった一方、町を嫌っていたはずの信行は熊討ちに新たな未来を見て町に残ることにする。
どちらにしても2人を待ち受ける未来はそう明るくはないということがつらいが、ラストの信行の目は希望に満ち溢れているように見えた。
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