このレビューはネタバレを含みます
まず、タイトルから分かるように虫嫌いな人にはお勧めしません。じゃあ自分が虫好きかって聞かれたら大嫌いなんですけど、創作物だし、劇中の胆である巨大化によって、よりその点が強調されたのでまあ耐えられるかな…。あまり参考にならないけど。
なんとなーく、『サイレントヒル』と『エイリアン』シリーズと『ミスト』を足して割ったような要素が所々散見される。あと、仏映画ではお馴染み低所得者や移民の住まう巨大団地でのソリッドシチュエーションでは同じく仏映画の『ザ・タワー』を彷彿とさせる。
ホラー…。なるほど、生理的嫌悪感を突いたその着眼点はよく、「怖い」よりも「気色悪い」を軸に続くわけだが、それが生かされていたと思う。途中のリラのクモとの初邂逅シーンとか、自分を見てるかのようで「分かる、分かるよリラ!」とか一番感情移入したシーンかもしれない。
とまぁ、局所的に見るとなかなかいいのだが、上記のようになんとなーく何らかの作品を彷彿とされるところがある。また、終盤になって唐突に盛り込まれる「実はあいつ/おれは〜」話が、途端に物語を凡百なものにしてしまった気がなきにしもあらず。
少し深読みするのなら、クモへの生理的嫌悪感というある種理不尽な嫌悪感と、団地に住まう主人公カレブら移民への嫌悪感がオーバーラップされているのかもしれない。そう思えば、カレブが物のやり取りをしているだけで犯罪だと騒ぎ立てた男性に対し反発していたのに、リラが浴室でクモと遭遇した際、問答無用で殺せと言う友人たちはある意味皮肉か。(その人の言動ではなく、その人の所属自体で善悪が判断される。クモも、「クモ」という存在自体で忌み嫌われ殺されている)
ホラー作品としては、カレブがエキゾチックアニマルや昆虫を飼っていたわりに、例えばその知識で窮地を乗り越えるでもないし、結局団地の他の住人や外部に原因を知らせるでもないため、単なるとんでも迷惑ヤローになってしまったのが残念。もう少し各キャラクターの掘り下げをするか、パニックホラーに全振りしてくれたらもっとゾワゾワ面白かったと思う。
まぁ、つらつらと書いてはいるが、「観客をゾッとさせる」点では十分及第点と思う。
そうそう、途中友だちのマティスが膝十字固め決めるところは失笑してしまった。(フランスと柔道)
ちなみにお家のなかでクモ見つけたら、空のペットボトル被せるとそこに入ってくるので、そのままお外にポイするといいですよ。(口を上にしてもなぜか出てこないのです)