kyon

理由なき反抗のkyonのレビュー・感想・評価

理由なき反抗(1955年製作の映画)
3.5
グザヴィエ・ドランの『胸騒ぎの恋人』ではドラン演じるフランシスがディーン・ヘアにし、デミアン・チャゼルの『ラ・ラ・ランド』ではグリフィス天文台が映される。

『理由なき反抗』、この作品自体あのジェームズ・ディーンのオールバックヘアに赤いブルゾン、白いTシャツにジーパンの出で立ちが元でデニムが若者に浸透したと言われた映画衣装には語り継がれる作品。
さらには若者の思春期特有の感情をディーンはあの睨む直前みたいなキザっぽい表情で魅せる。


でも意外なのはその有名なルックはチキンレースからで、それまではシックなスーツ姿。

個人的にいくつか若者を扱った作品にある”経験しないとわからない若者特有の感覚”に通じるものがあって、現代だとナイフゲームしたりチキンレースしたりは共感しづらいんだけど笑、ディーン演じるジムが家族にそれこそ反抗する場面のいくつかは、あれ、結構まともだなーって思った。

つまりその反抗しているんだけど、言ってることわかるな、ひとりよがりではないなあ、がディーンのかっこよさに繋がってる気がします。

あと思いの他登場人物ほとんど裕福な家庭、少なくとも中流階級以上の暮らしをしていて、そしてジム、ジュディ、ジョン、この3人はどこかファザー・コンプレックスを作動させているところが面白かった。

ジムは母親の尻にしかれっぱなしの父親の姿に落胆し、ジュディは父親との突然の親離れ子離れ(思春期だから当たり前ではある、さすがにキスは…と止める父親)に戸惑い、ジョンは両親とも離れ離れで、かつ父親の背中をジムに重ねその面影を求める。

この父親に対する若者のスタンスは60年代に繋がる、後の若者文化への布石の1つとも言えるし、逆に言えば女性の立場が変化しつつあった時代に対する男性らしさの需要があったとも言える。

50年代の変わり目の時代が若者のデニムの衣装にも表れていたけど、作品の空気感がそうなのかなと思わせる。

あとはまだヘイズ・コードが機能してたのかな、ディーンって不良っぽいけど不良じゃない可愛さもある。それがミルクを飲むところ。不良だからてっきり他の作品にもあるようなお酒や薬に手を出すかと思えばミルク、健全笑

この作品はもう古典に入るのかな?最近古典を考えると、今の時代の名作を生み出すためのベース、というか影響、余波の強さもあるのかなと思う。

少なからず私の好きなドランもチャゼルもディーンを意識したり引用してる時点で、この作品の余波の大きさを実感する。
kyon

kyon