中野イオン

ルックバックの中野イオンのレビュー・感想・評価

ルックバック(2024年製作の映画)
2.5
【ルックバック】見終えて…なんだかモヤが残ったのが正直な感想。

アニメーション作品としては
満点5だけど、
物語として…少し解せません。

おそらく世間は絶賛の嵐なのは、知っております。
何度も泣きそうになったことも、確か。

しかし、この感想は、原作が短編の部類(長編乱立の漫画界にあって)なのに、予算かけて1時間の
【映画】にしてしまった功罪かもしれない。


原作は話題になった際に既読ですが結構、忘れてました。



前半というか、大半は
漫画(絵描き)家あるある「まんが道」物語としてとても微笑ましく、基本的にはとても楽しく観た。


しかし、だ。
最後の凶行の置き所がどうも解せない。

リアルではあるもののどこか牧歌的なまんが道物語が突然、あの事件により【ノンフィクション】化、いや、わざわざ付け足すかのように
【事件化】してしまうのが居心地悪い。
あまり自然じゃないんですよね、映画脚本としては。

2人の少女のまんが道物語と、あの凶行の接地面がない。
たしかに、引きこもりが治って外に出て、そして美大に進学したことが凶行の被害者となる必然なのだが、それを必然とすると、割となんでもアリ…つまり、自然災害や交通事故でも、アリなのだ。

加害者はたしかに、パクられた…などと言い創作世界の被害者なのは分かる。
ならば、それは美大なのだろうか?

京都アニメ事件からのインスパイアとのことだが、
やはり【パクリによる被害妄想】に設定したいなら美大ではなく、出版社や漫画家事務所に設定すべきではないか?

実際に起きた事件から着想していてまさに【事実は小説よりも奇なり】なのだが、
あまり2人の10年以上に及ぶ大河まんが道ドラマと凶行に、運命的な連なりがないのだ。

事件だからそんなもの…といえば、それまでなんだが…。

本当に見たかったのは、
2人の漫画家の心のぶつかり合いであり、【事件】つまりプロットポイントによる葛藤なのだろうか。

真の感動は、2人の漫画家の
絵描きたちの魂のぶつかり合いじゃないだろうか。

一本の映画にしたことで、劇場鑑賞になり有料1700円に。
ネットで無料で読めたイチ短編漫画よりもその存在が大きくなり、
「意味性」が膨らんでしまった。だから、あえて文句を言うのですが…。

あの物語を語っておいて、8割のところでの凶行…
物語的な事件に翻弄させすぎだよ、と思うのです。

それも主人公2人がちゃんと好きになれてる証拠なので、その意味では素晴らしい映画ではあるのだけど…
中野イオン

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