似太郎

めまいの似太郎のレビュー・感想・評価

めまい(1958年製作の映画)
5.0
【すべてのことが同時に起こる】

昔観たヒッチコック作品。この頃のテクニカラーによる美しい映像には思わず溜息が出る。50年代のLAの街並みがとても綺麗。🌆

ブロンドヘアーの美女、キム・ノヴァクに囚われた主人公を演じるジェームズ・スチュワートの右往左往ぶりが見もの。彼女の背後には何やら陰謀らしきモノが。それ自体が主人公の妄想なのではないか?とも感じるけど。🤔❓

全編がスチュワート演じる探偵の主観のみで進行するんだけど、いざ客観視してみるとただの精神異常者の一人芝居でしかない所が凄い。ラストの教会の鐘の音が主人公のキ○ガイぶりを如実に示す。この世界を取り巻く全てが虚構(フェイク)で構築されているのである。この発想はかなり凄い。

トマス・ピンチョンの『競売ナンバー49の叫び』というこれまた難解な小説があるが、あの小説のやっている事とこの映画は何かと類似点がある。どちらも「すべてのことが同時に起こる」という意味でパラノイアの内面世界により肉薄した内容に仕上がっているからだ。主体→客体がものの見事に倒置する…。この発想自体が非常にピンチョンに近いのだと思う。

ここ最近では、マーティン・スコセッシの『シャッターアイランド』が本作の「手法」を上手く取り入れているので、壊れた主人公にどこまで感情移入させるか…といった演出法を良く見抜いてるなぁ〜、と感心したりもした。要するにラストに於ける「教会」が「灯台」にすり替わっただけなんである。😂
似太郎

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