ブラックユーモアホフマン

土砂降りのブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

土砂降り(1957年製作の映画)
4.7
傑作です。

オープニングクレジットの背景に流れる画からして超絶カッコいい。具体的に何を指してそう言うのか自分でも分からないけどアメリカのドキュメンタリーみたい。

汽車の走る線路沿いの連れ込み宿に住む家族。長女の岡田茉莉子は佐田啓二と結婚間近まで話が進んだが、家が連れ込み宿で母が妾だと知れて破断。怒りや悲しみを誰にも打ち明けないまま行方をくらます。
二年後、神戸のキャバレーで働いていた岡田茉莉子の元に、会社の汚職事件に巻き込まれ警察に身を追われる佐田啓二が妻子を置いて単身逃げ込んでくる。

煙ってやっぱり映画に映えるなあ〜というのと、岡田茉莉子の美しさも含め画がバチバチにキマってる。
脚本も演出も素晴らしい。全登場人物を憎みきれない。でも悲劇が起こってしまう。タイトル通り「土砂降り」の一晩のシーン。家の構造の面白さも相まって完璧。

佐田啓二の役、今なら中島歩さんがやったらいいと思った。
長男役の田浦正巳も素晴らしかった。ちょっとデリカシーない発言とかもするんだけど良い奴で。妹が興奮して言い争いが始まっても常に冷静で、周りのペースにつられず少しゆっくりめのセリフのペースが変わらない。面白くて良い演技だと思った。

しかし妹が父を責めるシーンで、妹が少し擁護しようとした兄に対し「お兄ちゃんも男だからそう言うのよ!」と言い放つ。その通りだ。本当にこの時代の日本映画の性的不平等さの視座の進み方にはいつも驚かされる。にもかかわらず、なぜまだ現実は大して変わってないんだ。

【一番好きなシーン】
土砂降りの一晩。