みや

ラジオ下神白―あのとき あのまちの音楽から いまここへのみやのレビュー・感想・評価

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個人的には前の作品の方が好きだったんだけど、被災した人々や生活、場所をプロジェクトとして継続して作品制作する監督には本当に脱帽。佐藤真だったり過去のドキュメンタリー監督たちがそうであったように撮影対象の生活に溶け込んで、関係性を築いているからこその撮影素材たちだと思う。
現代で気骨のある作家は小森はるか、あなたしかいないと思う。

上記の例として個人的に好きなカットがあって、高齢女性が全力で昭和の歌謡曲を歌っているんだけど、そのマイクを持つ手が尋常じゃないほど震えていて、痙攣に近いようなおそらくお年を召しているから手が勝手に震えちゃうんだろうけど、気になるくらい震えてるんですよ。
大丈夫ですか?って心配になるんだけど、その女性が歌い終わった後、全力で歌ったもんだからなんか表情がスッキリしていて、とっても満足した笑顔がキラキラ輝いてたんですよ。そんな手の震えなんか一切痕跡を残さないんです。
あーこれだなって思いました。
画面いっぱいに幸せが詰まってました。

現代の映画業界、攻撃的な表現?エモさに傾倒している表現?圧倒的な充実度のある表現?色んな表現に躍起になっている一方で小森はるかは何年もかけて丁寧に静かに「優しさ」を映画の中で描いて、現実と向き合っている。
こんな作家をフューチャーせずにはいられないよな日本。
みや

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