舞帝

ソイレント・グリーン デジタル・リマスター版の舞帝のレビュー・感想・評価

3.8
「もう、人間がいっぱい………」のキャッチコピーに惹かれて鑑賞。
チャールトン・ヘストンの代表作といえばベン・ハーか猿の惑星(初代)が鉄板だが、こんな映画にも出てたのか〜ぐらいのテンションで臨む。

………あれ?B級と侮っていたら意外に面白い。

食糧難の近未来ディストピアで不審な死を遂げた富豪を捜査する警察官がたどり着く真実と、その過程をさながら地獄巡りのように追っていく。
確かにセットはチープだし、(いくら庶民の住まいとはいえ)2022年なのにブラウン管テレビに豆電球、自転車発電と近未来感皆無(逆に言うと時間が止まったまま退廃だけしていった世界とも言える)。結末も正直そこまで驚かない。

そんな本作の良さは根底にある思想のように感じた。
昔も今も人間社会がクソなことは変わらない。だがかつて世界は美しい自然があった。それもなくなった未来に何が残る?
"家具"だ"本"だとラベリングされ、何をするにも息苦しい未来は、環境破壊や地球温暖化以外の要素を暗示しているかのようだ。

美しい映像と好みの音楽に包まれて終焉を迎える人生も悪くはないが、それを手放しで称賛できない胸のつかえを覚えつつ、帰路についた。
一個人は社会の流れすべてに抗うことは無理だが、人としての矜持を守れるかは己次第だ。

※環境保護論者ではありませんので悪しからず。
※後で調べたら「トラ・トラ・トラ!」「ミクロの決死圏」と同じ監督だった。題材に縛られないイズムをなにか感じた気もする。
舞帝

舞帝