前歯カケル

イン・ザ・プールの前歯カケルのレビュー・感想・評価

イン・ザ・プール(2005年製作の映画)
5.0
三木聡監督 イン・ザ・プール

ドラマ「時効警察」や映画「インスタント沼」などを手がける三木聡さんのコメディ色が強い個性が光る作品です。

風変わりで奔放な精神科医の
伊良部 一郎(松尾スズキ)のもとへ
3人の患者が訪れます。

持続性勃起症 田口(オダギリジョー)
脅迫神経症 岩村(市川実和子)
プール依存症 大森(田辺誠一)

キャッチコピーとして
「トンデモ精神科医」と銘打たれていますが三木聡監督と松尾スズキが見事マッチしており、一歩踏み込めば狂気じみているはずなのに、しっかりコメディに落とし込んでくれます。

伊良部医師がダントツに曲者のために気を取られがちですが、登場人物も皆やはり独特ではあり、抱えている問題と対峙しては悩み、平常心を保とうと葛藤します。

診療毎に伊良部の奇行に戸惑う3人ですが、その奇想天外な伊良部の発言や行動力に患者たちは不思議とこじれた悩みが解放されていき次第に症状が改善されていきます。

大きな展開や盛り上がりといった場面はなく一定の温度で展開されていくため好き嫌いは分かれるかと思いますが、随所に散りばめられる笑いや小ネタがクスりとくるので最後まで楽しんで見れる作品だと思います。



※以下、少しネタバレです。

プール依存症の大森は、自身が依存症という自覚がないため映画の終盤で市民プールに不法侵入することで、伊良部医師の患者メンバーに加入(笑)といった形で映画は終わります。

大森は自身の依存症が相当末期であることや夫婦生活、職場のストレスから目を背けていたため、方向性は間違ってしまいましたが「もう何も怖くない」というある意味最強のメンタル状態で背負っているものを全てぶん投げてプールに不法侵入するところは大森も視聴者もどこか爽快感を得られます。

原作では精神科医 伊良部はシリーズ化しており、本作のイン・ザ・プールが1作目です。原作自体が短編小説集のため映画ではオムニバス形式っぽさを出しつつ微妙に物語がリンクしている描写はありますが、基本それぞれの登場人物単体ではほぼ繋がりはないため一話完結のドラマや短編集の感覚で見れます。

伊良部医師のシリーズ2作目の「空中ブランコ」はアニメ化・ドラマ化されておりそちらも申し分ない伊良部ワールドが堪能できるので機会があればぜひご視聴してみてください。

オマケ
伊良部が髑髏という文字を金八先生のように解説するシーンがあります。
「四の釣り針に虫を刺し
田中を串刺して女に食わす
左に骨を二つ書く
あっという間に髑髏が書けた」

こんなユニークな医者に診てもらえるのであれば足繁く通いたいですよね笑
前歯カケル

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