Omizu

写楽のOmizuのレビュー・感想・評価

写楽(1995年製作の映画)
3.7
【1995年キネマ旬報日本映画ベストテン 第5位】
『沈黙』篠田正浩監督が謎の絵師東洲斎写楽を描いた作品。フランキー堺30年越しの企画で、主演の真田広之はキネ旬主演男優賞を受賞した。また、カンヌ映画祭コンペにも出品された。

少し冗長で長いが、真田広之ら役者の名演と篠田正浩監督ならではの演出、華麗な美術と衣装が素晴らしい。

未だに身元が明らかになっていない写楽、その半生と業績を独自の視点で描いている。

当時喜多川歌麿という有名絵師を抱えていた蔦屋重三郎、彼に去られてお抱えとなったのが東洲斎写楽。一説には能役者であり、プロではなかったというが、ダイナミックな「大首絵」で一世を風靡した。しかし役者らの反発、蔦屋重三郎の死により僅か1年で消えてしまった謎の絵師である。

岩下志麻演じる大道芸人の女将、フランキー堺演じる蔦屋重三郎、葉月里緒菜演じる花魁花里などとの交流を通じて一瞬の花を咲かせる写楽を真田広之が見事に演じている。

絵師として見出されるまでが少し長すぎる。特に岩下志麻とのくだりはもう少しスピードアップできたのでは。絵師として人気になる(というか物議を醸す)までが長く、そこからがイマイチ描きこみ不足。どのように庶民に受け入れられたのか、または受け入れられなかったのかをもっと丁寧に追ってほしかったところ。

とはいえ大いに予算をかけたであろう江戸の美術、衣装の絢爛さには目を見張るものがある。花魁花里は本人のミステリアスな雰囲気も含め魅了されてしまった。

全体にもう少しスピードアップして欲しかったのは事実だが、映画としてとても面白かった。流石篠田正浩。
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