ぶみ

新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!のぶみのレビュー・感想・評価

3.5
飽くなき探究心が、世界を変える。

小林啓一監督、藤吉夏鈴主演による青春ドラマ。
憧れの作家の存在を探るべく、学園非公認の新聞部に入部した主人公の姿を描く。
主人公となる文学少女の高校一年生・所結衣を藤吉、新聞部の部長・杉原かさねを髙石あかり、文芸部の部長・西園寺茉莉を久間田琳加が演じているほか、中井友望、綱啓永、筧美和子、石倉三郎、高嶋政宏等が登場。
物語は、文芸部に入りたい結衣が、憧れの作家「緑町このは」の正体を突き止めることができたら入部できると西園寺に言われたことから、情報をもつ新聞部に入り新米記者として東奔西走する様が中心となるが、ここ最近『殺さない彼と死なない彼女』や『恋は光』と、単にキラキラしているだけや、安易な恋愛ものに走らず、オリジナリティ溢れる設定の青春ものの立ち位置を築きつつある監督らしく、高校生と新聞記者という一見全く合わない要素を見事にマッチさせており、作り出している世界観はなかなか他では見ないものに仕上がっている。
そして、こう言った作品では主演も含め、若手キャストの演技力が危ういことがあるのだが、なんのなんの、本作品が映画初出演かつ初主演となる櫻坂46の藤吉の透明感を筆頭に、コメディでもシリアスでも確かな存在感を見せる髙石に、お嬢様感が半端ない久間田と、皆しっかりとキャラクターを落とし込んだ演技を見せてくれていたのは嬉しい誤算。
そんな彼女等を、石倉や高嶋といったベテラン陣がしっかり支えてくれていたのも好印象であるのと同時に、戸田恵子の存在感も一際光るものとなっている。
また、肝心の物語も「緑町このは」を探し出すというミステリ要素に加え、スクールカーストに学校の不祥事と思いのほか社会派作品的な要素が盛られていたのは意外であり、そんな内容となると往々にしてサスペンス色が強くなりがちになるところを、時折笑いも交えつつ、カラッとした学園エンタメとなっていたのは良かったポイント。
脚本が全体的に弱かったかなとは思うものの、ジャンル映画としては欠点らしい欠点は見当たらず、高嶋のオーバーアクトも終盤には心地良くなってくるとともに、欅坂46を最近見ないと思っていたら、実は櫻坂46になっていたと最近知った私としては、ファンに叱られることを恐れずに言うならば、途中から藤吉がどうしても波瑠か森山未來に見えてしまっていた一作。

打算で生きるような人生はお断り。
ぶみ

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