MasaichiYaguchi

ティアーズ・オブ・ブラッドのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.5
2019年のフランス映画「レ・ミゼラブル」の脚本家ジョルダーノ・ジェデルリーニが監督・脚本を手がけた本作は、経歴が謎に包まれている主人公レオは何者なのかという謎解きを軸に、警察、強盗団、夫々の思惑と復讐心が導く暴力の連鎖の果て、やがて悲しい真実が明らかになっていく。
深夜の地下鉄で、1人の青年がホームから線路に転落した。
運転士レオは車両を急停車させ最悪の事態は免れたように見えたが、青年は銃で撃たれており間もなく息絶えてしまう。
驚くべきことに、その青年は疎遠になっていたレオの息子ユーゴだった。
警察はユーゴが強盗事件に関与していたとして捜査に乗り出すが、父レオについて調べるとその経歴は謎に包まれていた。
一方、息子を失い悲しみと怒りに燃えるレオは、警察の目を欺きながら事件の真相に迫っていく。
警察でさえ過去の情報をつかめない謎の男=主人公レオを演じるのは、スペインのゴヤ賞で2度受賞しているアントニオ・デ・ラ・トレで、重厚かつ飄々とした存在感で、息子を失った父親の癒えることのない悲しみと怒りを体現する。
更にフランスから、「17歳」で鬼才フランソワ・オゾンに見いだされて以降、活躍を続けるマリーヌ・ヴァクト、「息子のまなざし」でカンヌ国際映画祭主演男優賞のオリヴィエ・グルメら、ヨーロッパを代表する豪華俳優陣が集結し、悲しくも凄絶な復讐劇を彩っている。
警察と強盗団、そして一見普通の中年男性である「過去のない男」レオ、そのスリリングな三つ巴の戦いは、どのような結末を迎えるのか?