き

ピクニック at ハンギング・ロック 4Kレストア版のきのレビュー・感想・評価

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傑作。🥲🥲🥀♥️
1900年、セイント・ヴァレンタインデーの日に、ピクニックにでかけた女子学生たちと教師の倦怠な午後は、生徒3人と教師1人の失踪によって暗転。寄宿学校として規律を重視してきた学園内の歯車が狂い始める。映像の耽美性とその謎があまりにも甘美すぎて、不穏な白昼夢を観ている気になる。絵画的でもあり、少女たちは美しい。19世紀中頃に、ハンギングロック付近にいた原住民たちが追い出され、植民地化されたということ。そして原住民たちは岩山に神聖さと精神のつながりを見出していたらしいということ。そして規律ある生活をおくるヴィクトリア調の服装をした女の子たちもまた「植民地化」され抑圧された存在であること(己を抑えよ!)。女の子たちは正しい服装を崩し(靴下と靴を脱ぎ)素足で岩の割れ目に消えていく。岩山の血塗られた土地の歴史と女の子たちが共鳴しあってうまれた世界のずれの謎は、もちろん男たちや男権的な世界には見出せるはずもなく、「謎」が謎のまま提示されて宙ぶらりんに終わるのがすばらしい作品。その宙ぶらりんさで世界を惑わせるのは、「男性的」な論理的思考を徹底的に否定しているようだ。岩山は無言の暴力で男権的な世界を攻撃し、欺瞞はボロボロと剥がれ落ちていく。岩山に消えた少女たちはずれた世界のはざまでどんな風に暮らしたのだろうと夢想せずにはいられない。
き