がちゃん

ザ・レイプのがちゃんのレビュー・感想・評価

ザ・レイプ(1982年製作の映画)
3.9
落合恵子原作、東陽一監督。
この時代にたくさん発表された女性映画。
同時上映された『ダイアモンドは傷つかない』と並んで、このジャンルの代表作と言えるかもしれません。

恋人・章吾(風間杜夫)と熱いひと時を過ごした後、自宅に帰る途中にレイプされた路子(田中裕子)。

路子の異変を感じた章吾はその事実を知り、優しく路子を慰めてそのことは忘れるように言うが、路子は警察に届けるという。

警察に届ければ裁判になっていろいろ傷つくことになるからやめるように章吾は言うのだが、路子の意思は固く・・・

強姦犯罪は起訴に持ち込んだとしても、法廷で被害者は更に公の場所で辱めを受けて傷ついてしまい、それを恐れて泣き寝入りしてしまう女性が多いというのはよく聞く話です。

本編でも、犯人の弁護士が、これでもかというくらい被害者のプライバシーや性生活に踏み込んだ質問をし被害者を傷つけます。

裁判で事件の内容とは関係ない被害者の内面があらわになるにつれて、恋人との関係も微妙に変化していきます。


こういうテーマだけに、男性と女性では視線がまるで異なってくると思います。

被害者の恋人が投げかける優しい言葉。
その一つ一つが被害者の心を引っ搔いているのは本当によくわかります。でも、そういう言葉でしか慰めることができない男の気持ちもよくわかります。

彼女のことが好きだから全力で彼女を応援したいのだが、すればするほど嫉妬に似た妙な感情が膨らんでくる。
劇中で彼女の元カレの存在を初めて知ったりしたのだからなおさらだ。

彼氏の変化を敏感に感じ取った路子は彼氏以外に心の安らぎを得ようとする。
できるだけ冷静を装いながら。

路子の馴染みのスナックで、井上陽水の“青空、ひとりきり”に身を任せ踊る彼女はそれでも闘っている炎が燃えている。
この時の路子の表情はセクシーで熱くてこの作品一番の見どころだ。

裁判の行方はあっさりと描かれて終わる。
意図的かどうかわからないが審理が終わってから裁判所にかけつけた章吾との軽いやりとりのあとのなにか吹っ切れたような路子の表情。
この表情は田中裕子にしかできないだろう。

愛する者との性交と無理やり行われる性交。
前者の喜びの表情と後者の絶望的で虚無的の表情の違いは映画でしか表すことができない表現方法で、演じ分けることができる田中裕子は凄いですね。

それにしても、日本映画に限らずこのような作品で描かれる加害者の弁護士の質問や警察の調書のとりかたなどは本当に酷いですね。
冤罪を防ぐためにある程度は仕方ないかもしれませんが、映画で見る場面がすべて真実である観客からすると暗澹たる気持ちになります。
現在、現実の法廷ではどうなんでしょう。

ラストのシャワーシーン。
彼女は洗い流すことができたのでしょうか・・・





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