北方十字軍によりキリスト教へ改宗させられたリトアニアで迫害されながら、世界へ散らばり、密かに息づいてきた宗教を描く……、とコンセプトは壮大。
現代社会の中で息を潜める彼らの暗躍や儀式を描くのは簡単に見えて難しい、ともすれば滑稽かつチープな映像に陥りかねないが、監督の技量は確かなもの。
的確なロケハンに雰囲気ある照明、一定のクオリティを保つ衣装/美粧、そして編集/VFXの力で、ゴシック絵巻を幻視させる。
調べたところMVの制作キャリアが豊富な監督と知り思わず納得、オーストラリアでロックバンドからダンスアクトまで、幅広いアーティストとコラボしているようだ。
自身とその家族へ及んだ迫害に復讐するヒロインだが、新たな教祖に就任と「アンチクライスト」の一線は死守する脚本。
しかし細かな部分に綻びも多い。
また20代のヒロインを演じる女優はどう見ても40~50代、作品内には女体が過剰に氾濫している。
「2020年代にオーストラリアで蘇ったユーロトラッシュ」とでも言いたくなる胡散臭さだった。
しかしこんな作品がオーストラリアから出てくるのは、何とも不思議。
そういえば4ADの御大デッド・カン・ダンスも、豪出身だったっけ。