コマミー

セーヌ川の水面の下にのコマミーのレビュー・感想・評価

セーヌ川の水面の下に(2024年製作の映画)
3.8
【いつだって人間の傲慢さは厄介】





これは凄い面白い"サメ映画"だった。

…いや、というより、若干胸糞も入ったサメ映画でもあり、サメも充分恐ろしい存在なのだが、本作では"人間が恐ろしいというか愚か"というか…まさかサメ映画でこんなに考えさせられるとは思いもしなかった。
監督は「フロンティア」や「ヒットマン」と言った、ホラーや娯楽作でお馴染みのフランス監督"ザヴィエ・ジャン"。彼の作品は評価が分かれる作品が多かったが、本作は個人的にめちゃくちゃ当たった作品なのではないかと思う。

本作は確かにサメも新種の恐ろしい存在が出てくるのだが、そもそも人間が悲しいほど愚かな行動をするのが本作なのだ。
まず行政の役立たなさ。なんだか、本作に出てくる"知事"の言動や行動は日本の政治家の「五輪強行開催」の構造によく似ているなと感じ、リアルに恥ずかしくなった瞬間であった。イベントの開催の為なら、セーヌ川の水質汚染も"不発弾"発見も、サメが大量発生する事も、"リスクを何も考えないアホな政治家"の表情が見事に描かれていて、ある意味この描写が容赦なく描かれていたので驚いた。
そして"主人公"や"保護団体"らしき人達すらも、決してヒーローとして描かれているのではなく、こいつらですらも愚かな行動を続けてしまうのだ。頭を抱えてしまうシーンかもしれないが、むしろ娯楽作だからといって「誰か1人がヒーローになる」という描写を拝した事が私的にツボだった。

そして本作のラスト。これはかなり唐突な終わり方かもしれないが、今までのサメ映画にないラストだった。このラストの描き方まで、人間の壮大な愚かさが描かれており、度肝を抜かれた。そしてこのラストの"爆破シーンのスケール"も凄い…これ劇場で流さなくて大丈夫ですか?

まさに"救いも何もない"サメ映画…人間が勝手にミスし、勝手に崩壊していくサメ映画…。
もうもはやサメ悪くない…サメ映画…。

そんなサメ映画の新たな胸糞な傑作が、Netflixに登場した瞬間だった。
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