面会室スリラーが大好き。古くは「羊たちの沈黙」、邦画では「凶悪」、「死にいたる病」、他にも「ある男」の柄本明も良かった。アクリル板一枚を挟んで、そこ向こう側には連続殺人犯などの凶悪犯が存在している。面会人には安全は保たれているのだが、凶悪犯の表情や言葉だけで狂気が染み出てきて面会人を侵食する。そのサスペンスフルな状況がとてつもなく好き。本作の連続殺人犯の容疑者には「ちむどんどん」の黒島結菜が演じており、真逆の役柄を演じていて興味深い。汚い歯の入れ歯に助けられている部分はあるが、捉えどころは無いが狂気と思慮深さ、愛情さえも感じる演技で本作の成功を感じさせる。主演の柳楽優弥のキャスティングも良し。好き嫌いはあるが、デビュー作である「誰も知らない」の役柄と境遇が良く似ていて、育ちの悪さから粗野でありながらも優しさを醸し出すという役柄には合っている。あと中川大志と佐藤二朗のキャスティングも良かった。
原作は未読。伏線と回収も心地良く、サスペンスではありながら青春映画とも言えるラストは爽やかさを感じる傑作。エンドロールに日本語歌詞付きでオリヴィア・ロドリゴの「ヴァンパイア」を持ってくるセンスの良さも素晴らしい。
テレビ職人である堤幸彦監督作品ということであまり期待はしていなかったが、本作は良かったです。