TOTO

バーン・アフター・リーディングのTOTOのレビュー・感想・評価

4.6
『尚、このメッセージは5秒後に消滅する――』

これから話す事は冗談抜きで本気で思っている事です。
この映画は、ブラッド・ピットの最高傑作です。
また、この映画は、ジョン・マルコビッチの最高傑作です。
ついでに、この映画は、ジョージ・クルーニーの最高傑作です。
はたまた、この映画は、フランシス・マクドーマンドの最高傑作です。
もちろん前人未到の「アカデミー賞」主演女優賞を三度受賞(1996年『ファーゴ』、2017年『スリー・ビルボード』、2021年『ノマドランド』)した功績は偉大ですが、それでも『バーン・アフター・リーディング』がBESTです。
そして、この映画は、コーエン兄弟の最高傑作でもあります。

断言します。本人、至って本気です。

この映画のストーリーを掻い摘んで説明すると――。
CIA分析官であるオズボーン"オジー"コックス(ジョン・マルコビッチ)が飲酒癖を理由に降格処分となり、憤って退職します。そこでオジーは自伝の執筆を始めるのです。
一方、連邦保安官のハリー(ジョージ・クルーニー)と不倫関係にあるオジーの妻(ティルダ・ウィンストン)は、ほとほと夫に愛想が尽き、離婚を企てます。
そこで夫の資産を調べる為にPC情報をCDに焼きますが、その際、オジーが執筆中の自伝の原稿も間違えてコピーしてしまい、更にそのCDをうっかりスポーツジムのロッカーに忘れてしまいます。
一方、ヤリチンのハリーは出会い系サイトでリンダ(フランシス・マクドーマンド)と出会います。二人は会話のノリや変わった性癖までぴったりウマが合います。(ここ、この映画で一番重要なシーンです。必見)
スポーツジムで働くリンダはさらなる出会い系ライフを充実させる為、美容整形と豊胸手術を希望しており、その費用を工面する為に悩んでいました。
そんな時にロッカールームに残されていたCDの中身を見て、国家の安全を揺るがす重要機密だと確信します。
そこで同僚のチャド(ブラピ)と共に、機密情報の持ち主であるオジーを強請るのですが、中身は単なる思い出録に過ぎず、オジーは「ふざけんなバカ」と言ってチャドを殴り、相手にしませんでした。
そこで怒り心頭のリンダは、このCDをなんとロシア大使館に持ち込みます。
この時点でCIAに情報が入ります。オジーから持ち出された機密資料だけに、俄かに緊張が走るのです。
しかし中身を見たロシア大使館職員は呆れてリンダを追い返します。
強請りを成功させる為に、もっと重要な機密情報を入手したいと企むリンダとチャド。
そこでチャドはコックス邸に潜入しますが、離婚計画を着々と進める妻の策略で夫、オジーは締め出されており、家には不倫相手のハリーが出入りしていました。
そこでクローゼットに隠れるチャドを発見したハリーは、思わず拳銃で射殺してしまいます。
チャドが戻らない事でパニックに陥るリンダは、スポーツジムのマネージャーで、リンダに思いを寄せる真面目なテッド( リチャード・ジェンキンス)に、コックス邸に侵入するよう頼みます。
しかし間の悪い事に、妻に銀行口座まで凍結されたオジーが、私物を持ち出す為、斧で地下室の窓を叩き割って侵入していました。そして自分のPCをいじるテッドを発見し、思わず怒り沸騰、持っていた斧で殴り殺してしまうのです。
そうやってオズボーン・コックスの周囲で次々に死体の山が築かれていきます。そして殺人犯として捕まる事を恐れて逃亡を謀ったハリーは空港で拘束され、オジーに至っては駆け付けた警官に撃たれて脳死状態となります。
この混沌とした惨状をなんとか秘密裏に収束させたいCIAは、生存者であるリンダが求める条件ーー、全身美容整形手術の費用を負担する事で、この事件の報告ファイルに蓋をし、国家規模の間抜けな物語は幕を閉じたのでした。

これぞ、コーエン兄弟。
徹底したブラックユーモアとシニカルな皮肉、そして笑うに笑えないペーソスが込められた最高傑作、それが『バーン・アフター・リーディング』なのです。
TOTO

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