物語を前提とせず、河川という地理的・歴史的・産業的な「流れ」を通して、場所と時間、自然と人間活動、アメリカと中国という二つの極を感覚的に並置する実験的な映像作品。
頻繁に切り替わるショットと無音の情景は、空間を隔絶させ、音による時間の存在を意識させない構成になっている。無音であることで、現実の環境音が映像に介入し、観客のいる場所とスクリーンの世界が重なり合う。外界との接続は、河を通してアメリカと中国を結ぶという主題とも呼応している。

モノクロ、セピア、カラーが併用され、時間や記憶の層を示すかのように、光の質が絶えず変化する。共有される水の流れを通して、長江とハドソン川という二つの河は、異なる歴史と文明を抱えながらも、同一の時間構造を生きている。

ハドソン川上流や船上からの撮影では、かつてのアメリカ産業地帯の痕跡、航行する船舶、河岸の町並みが淡々と記録される。一方、長江では急速に進む産業化・都市化の痕跡が、河の風景とともに現れる。いずれも語りを持たず、観る者の「見ること」と「漂流する時間」の感覚を重視している。

この作品は、河という「流れ」を媒介にして、産業・環境・文明・時間性を映像化する試みであり、観る者自身がその流れの中に取り込まれていく。時間を漂流するような作品。