このレビューはネタバレを含みます
テレビシリーズを完走した上で鑑賞。
思いの外面白かった。
見所はやはり始の末路だろう。始が封印されるというラストは、剣崎の犠牲により始が人間としての生を送れるようになった最終回と真逆だ。これは、テレビシリーズで剣崎が掲げてきた「全ての人(始含む)を救いたい」という理想が叶わなかった事を意味する。このビターな締めが堪らない。
あとは物語冒頭、剣崎が始を封印したという事実を、天音ちゃんに打ち明けられず苦悩する描写も心に来るものがあった。あのギスギスしたすれ違いは、井上敏樹脚本ならではと言えるだろう。結局、天音ちゃんと始が直接再会出来なかったのも切なくて良い。
他にも、アンデッド達をテンポよく倒していくパートは見ていて心地が良いし、ブレイドのカテゴリーAであるビートルアンデッドのビジュアルは魅力的だし、映画オリジナルカットのロイヤルストレートフラッシュはカッコいいしと、劇場版ならではの見応えが多い作りだったのは好印象。
なのだが………難点もいくつかあるのも事実。
まず、音響が悪すぎる。特に、剣崎と橘さんが何言ってるのか全く分からない。まぁいつものオンドゥル語と流してしまえばそれまでなのだが、これテレビシリーズでいうと30話前後の公開でしたよね?橘さんはともかく、あの頃の剣崎は滑舌改善されてたでしょ?何でまた悪化してるんだ?
剣崎と橘さん両方とも、序盤の性格に戻っていたのも気になる。脚本が迷走していたあの頃ね。剣崎は新世代ライダーに対して常に喧嘩腰、橘さんは目的がフワフワしている。……で、橘さんは結局何がしたかったの?天音ちゃんを生贄にしてアルビノジョーカーを封印したかったんだっけ?でも黒幕である志村に利用されてただけなんだっけ?また操られてたんですか?あとそのサングラス全然似合ってないですよ?………うーんよく分からん。
あと天音ちゃんグレ過ぎでは?始が失踪しただけであんなに性格が豹変するもんかね?あそこまで行くともはや母親の教育不足な気がする。万引きの件、全体通してギャグっぽく描かれているけど、むしろ引いてしまった。テレビシリーズのたこ焼き回もそうだけど、敏樹の描くギャグって、笑いより困惑が勝つんだよな……。
………まぁこれらのダメな所含めてブレイドか!マイナスポイントとして挙げちゃったけど、序盤の空気感を久しぶりに味わえたという意味では一周回って新鮮だった。
総括「THE・ブレイドの劇場版」です。バトルファイト周りの物語が本格的に動き出したテレビシリーズ終盤には一歩劣るものの、前半と後半、両方のテイストを一度に浴びられるのは本作独自の魅力かもしれない。ブレイド好きには楽しめる良作でした。