メランクさん

リッチランドのメランクさんのレビュー・感想・評価

リッチランド(2023年製作の映画)
5.0
「オッペンハイマー」の影響もあり、
ちょうど「プルトニウム・ファイル」を読んでるところなんで、
マンハッタン計画によって生まれた街のドキュメンタリーだという本作も興味を持ちました。

プルトニウムファイル読んでて驚くのは、
原爆の開発というのが日本人を大量虐殺しただけじゃなく、
自国民にも多大な被曝をもたらしてるという事実。
今作でもまさに原子炉で作業をした結果、
被曝が原因で亡くなった家族の話が出てくる。

しかし、街自体はプルトニウムを生んだ街であることを誇り、
カレッジの校章がきのこ雲だったり、
アメフトチームの愛称がボマーズだったり、
完全にアイデンティティとして持っている。

だからこの街というのはアメリカという国の縮図で、
強さを誇ること、金を得ていることの代償として、
批判の対象であり、小さくない傷を内包している。
それは住人の被曝だけではなく、
原住民の土地を奪った上で、汚すという暴挙も含む。

核開発なんて、何から何までおかしい。
でも、人を巻き込み、金や可能性、未来をちらつかせて、
バカらしくも関係を続けていくしかなくなった。

そういう滑稽さを改めて感じつつも、
「汚れている」はずの街、そして荒野が美しく映され、詩や音楽、アートが彩る。
なかなか素敵な作品でした。