80年代の若者向け映画に出演していた俳優たちに付けられた呼称「ブラット・パック」の実態やその影響に迫ったドキュメンタリー映画。ブラット・パックの一員とされるアンドリュー・マッカーシーが監督を務め、当時の映像を折り込みながら、彼がエミリオ・エステヴェス、ロブ・ロウ、デミ・ムーア、アリー・シーディなどのブラット・パック俳優たちと久しぶりに再会してインタビューしていくという作品。もともと、アンドリュー・マッカーシーはブラット・パックと呼ばれた頃の自分自身を振り返った回顧録『Brat: An '80s Story』を2021年に出版していて(書き物としての評価も高い)、本作は自分以外の俳優たちがどうだったかのかを追った続編とみなすこともできる。実際に、アンドリュー・マッカーシーはインタビューでそのように語っている。
ブラット・パックという言葉が初めて使われたのは、1985年6月10日号のニューヨーク・マガジンに掲載された「Hollywood’s Brat Pack」というデイビット・ブルームの記事。本映画の公開に合わせてなのか、この記事をニューヨーク・マガジンのウェブ上で読むことができるが、彼らを辛辣に皮肉っている。記事の見出しに掲載されている写真は、エミリオ・エステヴェス、ロブ・ロウ、ジャド・ネルソンの三人が写っている『セント・エルモス・ファイアー』でのワンシーン。そして、私生活でもこの三人がハードロックカフェで女性をはべらせて騒いでいるみたいな描写で記事が始まる。そもそも「ブラット(brat)」は「悪ガキ」というような若者を蔑む意味で使われる単語であり、ブラット・パックという呼称そのものに軽蔑の意味が込められている。さらに、下積み時代に演技をしっかりと学んで一流になったマーロン・ブランド、ジェームス・ディーン、アル・パチーノなどの上の世代の俳優たちと違って、ろくに演技などの勉強もせずぽっと出できて人気が出てしまい、それを良しとしているみたいな記述が続いていく。