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永遠のモータウンのERIのレビュー・感想・評価

永遠のモータウン(2002年製作の映画)
3.8
某雑誌で森山未來くんが涙したと言うてた「永遠のモータウン」を見ました。それ以外に何の予備知識もなく。正直「ん?モータウン??て、なんや?」て言うぐらい。音楽好きはもちろん知ってるやろうけど、全くの無知で、最初何がなんだかわからんかった。

これは一時代をアンダーの場所から支え続けた、そして音楽シーンを誰よりも彩った無名のミュージシャンたちの音楽ドキュメンタリー映画です。原題は『Standing in the Shadows of MOTOWN』です。こっちのがぴったりね。彼らの名前は「The Funk Brothers」。全員が揃っていた頃から30年が過ぎて現役の彼らが再結成されたん。彼らが彼らを語るために。

最初ストーリー展開があるのかと思ったら、決してそのような映画ではなかった。全く知らない人たちが出てきて、知らない人たちの事を語り始めた。だけど、そこには魂があって、私は流れる音楽に心が解放された気分になる。全編、ナレーションと、本人や彼らを取り囲む人たちのエピソード話によって、織りなされていくねんけど、その合間合間に再現シーンやら、その時代の切れ端やれ、そして何よりゲストを迎えてのライブ映像が流れます。何を語るよりも、音楽が素晴らしく良い。本物て、きっとこういうことを言うんやろう、なぁ。

キャッチコピーは、ビートルズやスティービーよりも、ヒットの数が多いけど、彼らの名前は知られていない。実際、モータウンのルーツは「The Funk Brothers」にあって、彼らが曲を作ってるんやけど、全盛期になって彼らの中心で唄う歌手の名前がヒットチャートを駆けめぐる一方、彼ら自身のことは案外知られていなかったりする。

ソウルミュージック特有の、閉塞感からの脱出みたいな、そこに思いの丈が溢れている深さみたいなものって、否応なく胸に響くというか。誰かの悲しみもすくってくれるし、誰かの涙も笑い飛ばしてくれる、そんなエネルギーが溢れているんやろうなぁ。しかも、この音楽は肌の色なんて関係ないから、メンバーの中にはもちろん白人だっている。

なんやろ、ただただ目が釘付けになったというか。たぶん、映画自体はそんなに「The Funk Brothers」の魅力を100%、またそれ以上魅せてくれへんし、もっともっと魅力いっぱいに撮れた気もするんやけど、この偉大な魔法使いたちにスポットをあてたことに意味があると思う。もっともっと知りたくなる。

誰もが楽しめるエンターテイメント性いっぱいの、そんな映画では決してないけど。映画っていうのは、色んな視点を提示してくれる素敵なものやし、色んな感性や色んな想いを教えてくれるんやなぁと改めて思ったん。大好きな人には「たまらない」と思う。

最後の最後。亡くなった人たちも含めて、「The Funk brothers」を紹介して、みんなでセッションするシーンがあるんやけど、胸がぎゅってなった。最初の方で演奏する手のアップや、目のアップや、笑顔のアップのプロローグが個人的にお気に入り。そういう目の向け方が、すごい好き。

興味がある方は是非。
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