この作品から流れる音の全てに恐怖する。
冒頭、お気楽な音楽と殺人シーン、
ちぐはぐな映像が逆に恐怖を煽る。
じわじわと気味の悪くなる会話、
明らかに立場が優位なはずなのに
追い詰められているような恐怖。
直接手を加えられているのではなく、
真綿でゆっくりと首を絞められるような
息苦しさに、終始苦しめられる感覚。
誰も気付けず、次の瞬間には
全てが終わっている。
少し若い大杉漣さんが
見られて嬉しかった。
“あんたは誰だ?”
その問いに答えた瞬間、支配される側と
支配する側になってしまう洗脳スキル。
絶対に折れてはいけないのに、
これを無視し続けられる人間は
そういないだろう。
自分は特別だ。
そう思わせる事で相手を懐柔し、
心を惑わせ、孤独にさせる。
言霊とはよく言ったもので、
呪いとは相手にその言葉を
認識させることで効果を発揮する。
考えないようにしても、
◯ねと言われれば嫌でもその
言葉が頭をついて回り、
それに合わせて人は行動してしまう。
人が宗教を何故嫌うのか。
本能的に支配されることに対して
防衛心が働くからかも知れない。
次々と洗脳されていく人々。
たった1人がボソッと呟いた、
ただそれだけの事で多くの人が死ぬ。
何を失ったのか、誰も分からぬまま終わる。
怖いよなあ、本当に。
惹かれてしまう自分もまた怖い。
怖いもの見たさで自滅するのは
いつの時代の人間も同じかも知れない。
間宮邦彦と言葉を交わす度、
役所広司さんの目が据わっていくのが
恐ろしかったです。
終盤、あの施設にあった
テープレコーダー?から流れる
デタラメな音声がただただ怖かった。
もしも、伝道師に出会ってしまったら。
その時は、一目散に逃げるほかないのだと思う。