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ローマの遺跡
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『ローマの遺跡』に投稿された感想・評価

ローマを映さないローマ。ルソーのフィルモグラフィーにおいて重要な位置を占めるヴェネツィアの試みをさらに深化させた作品。

画面に現れるのは空疎な室内、窓、壁面、通路、カーテン、そして外部から侵入する光や音といった、「何かが不在であること」を示す空間ばかりであり、ローマと明確に認識できるものはコロッセオのワンシーン程度に限られ、作品の大半は都市そのものではなく、ローマという観念の残響を捉えることに費やされている。

ルソー作品に共通する固定ショットの持続は本作でも徹底され、出来事らしい出来事はほとんど発生しない。その静止性ゆえに、観客は単に画面を見るのではなく、画面の内部で時間がゆっくりと堆積していく感覚を経験する。これは因果関係によって展開する物語映画とは対極にあり、むしろ絵画や建築を前にしたときの知覚に近い。

印象的なのはフレームの扱いである。窓枠や扉、通路が反復されることで空間は幾重にも区切られ、フレーム内フレームの構造が画面を支配する。画面外から響く音と映像との接続も巧みで、見えているものと見えていないものの境界を絶えず揺さぶり続ける。そこにはルソー特有の映画的探究が色濃く反映されている。

ローマを舞台にしたドキュメンタリーの体裁を取りながらも、ナラティブを断絶し、映画という形式そのものを分解していく。その試みの先にあるのは、ローマについての映画というより、「見る」という行為そのものについての映画だった。