紅蓮亭血飛沫

天装戦隊ゴセイジャーVSシンケンジャー エピック ON 銀幕の紅蓮亭血飛沫のレビュー・感想・評価

2.5
スーパー戦隊VSシリーズの中でも、“二大戦隊共闘”という環境を全編通してフル活用させていた作品ではないかと思います。
二大戦隊の力を合わせなければ敵と渡り合えない、という共演するに至っての醍醐味をちゃんと機能させているのは勿論、Vシネマという特別な場でなければ実現しなかったであろう、スーパーシンケンジャー勢揃いといった見せ場が含まれているのもファン心を押さえてくれます。

かなり楽しめた作品ではあるのですが、どうしても目についてしまうのがシンケングリーン・千明とシンケンブルー・流ノ介による、ゴセイジャーへの態度の悪さ。
日下部さんが「殿がああなってしまって二人も動揺している」とフォローを入れてくれましたが、丈瑠がああなったからといってそう易々と気が動転するほど、侍は弱くないと思うんです。
TV本編1年通してたくさんの修羅場を潜り抜け、怒涛のクライマックスでは溜めに溜めて来た大どんでん返しを介し、“殿”として慕って来た丈瑠と今一度向き合う事となった侍戦隊シンケンジャー。
そんな彼らの生き様を見てきた身としては、丈瑠が外道衆の力に呑まれたという危機的状況に侍達が心を搔き乱されるのはまだしも、あまつさえゴセイジャーに八つ当たりするかのような態度を取るとはとても思えないんです。
ショックこそ受けても、「丈瑠を助ける手立てはないのか」と自分を奮い立たせて行動すると思います。
シンケンジャーというチームの絆は決して脆くないはずなんです。

更に言うなら、「我々は我々で動こう」とその場を後にした流ノ介と千明が、次に姿を現した時は座り込んで気怠そうにしてるのも頂けない。
せめてゴセイジャーが残りのシンケンジャーと邂逅しようとした場に偶然出くわした(お互い考える事は同じだった)といったニアミス案件にしても良かったと思います(いがみ合っているように見える二大戦隊が接近する切っ掛けにもなりますし)。
最終的にちゃんと千明自身からも謝罪があったので胸のつかえがとれた気分ではありますが、本作はシンケンジャーTV本編に関わっていない脚本家による作風なのもあり、“そのキャラクターの人間味”に齟齬が生じているのは否めませんでした。
私としてもシンケンジャーでは特に千明が大好き(シリーズ構成通して特に人間的成長を果たした人物だと思うので)なので、尚更本作での人当たりの強い態度が目立っている千明は見続けるのが苦痛でした…。

若干解釈違いともいえる点が目立っていますが、スーパー戦隊Vシネマの中でも上位に来る完成度だったかと。