◎女性版トップガンbut敵軍＝罪人で殺戮正当化

これ、日本語で読めるちゃんとしたレビュー、ほとんど見当たらないけど、ポリティカルな観点から全然コレクトぢゃない、褒めたらアカンやつぢゃないのかと思う。

＊1 METライブビューイング2024-25第二弾はジャニーン・テソーリの新作オペラ《グラウンデッド 翼を折られたパイロット》〜トニー賞作曲家が描く、母となった戦闘機パイロットの苦悩
2024.11.28(木) 16:15
topics.smt.docomo.ne.jp/article/spice/entertainment/spice-333778

2015年にアン・ハサウェイ主演の一人芝居として上演された原作戯曲は、ジョージ・ブラント作。

＊2
www.cinematoday.jp/news/N0070063

今回のオペラ化に際して、登場人物をコロスとしての合唱だけでなく、主人公ジェス（エミリー・ダンジェロ Ms）の他に、その夫となるカウボーイ＝牧場主？のエリック（ベン・ブリス T）、ジェスの上司である空軍司令官（グリア・グリムスリー Bs-Br）、ドローン操縦士としてのジェスの相棒センサー（カイル・ミラー T）、ドローン操縦士として心理的に苦悩するなかで生まれたジェスの分身（Ms）などの複数の人物が新たに書き加えられている。

全体は２幕構成で、第１幕は、優秀な女性空軍パイロットとしてイケイケの序盤から、短い休暇の際に兵士相手のポーカー目当てで軍人バーに出入りしていたエリックと意気投合して図らずも妊娠し、司令官からリタイアを宣告される幕切れまで、確かに軍人としての浮沈は描かれているものの、基本的にハッピーなジェスの姿が描かれる。

それに対して第２幕では司令官から軍への復帰を告げられるものの、予期していたパイロットとしてではなく、未知のドローン操縦士に就くことを命ぜられる。
それも現地には赴かず、本国にとどまったまま、ラスベガスの操縦基地に出勤して任務をつとめ、定時が過ぎれば毎日帰宅できるという思わぬ環境だった。

この戦場兵士としての殺戮者の任務と当たり前の日常とが地続きの生活を送るなかで、ジェスは次第に精神を病んで自己分裂を来たすようになり、終にイラクの重要人物（サーペンス？ フセインの関係者？）を自ら殺戮できるチャンスを目前にして、その彼が幼い娘と別れる場面を目視したことで自分と娘とのイメージと重なり、故意にドローンを破壊する行為に出てしまう。

軍法会議で有罪とされたジェスは果たして、精神の自由を回復できるのだろうか？
という話である。

確かに第２幕では、ドローン操縦士となったジェスの深刻な精神的破綻が描かれ、敵方もまた人間であることが「間接的」には描かれている。

しかし、パイロットとしての第１幕でも、ドローン操縦者としての第２幕でも、基本的に敵であるイラク兵士は罪人だ、だから殺せ！
Kill ! kill ! やったぁ、ザマァ見ろ！
の連続だ。

極めて好戦的な作品だと断じてよく、戦争という人類が最も避けなければならない非人道的な事態を引き起こしたアメリカそのものを自己反省するという視点は全く欠けている。

こんなんなら、日本人には批判する向きも多いノーランの『オッペンハイマー』の日本描写の方が余程マシである。

作曲家ジャニーン・テソーリ（ミュージカルの作品を多く手がけてきたという）が女性だからと言って、批判を免罪することはできないと思う。

MET
グラウンデッド　折られた翼
ライブビューイングにて鑑賞
一夜の関係から妊娠し夢のパイロットを諦め子どもを産むことを決意する
空に戻ることを胸にだいて

2部構成のミュージカルでストーリーが良かった　戦争を通じて心が病んでいく主人公を支える夫。愛により取った彼女の選択が良かった

クリスマスイブにぼっち鑑賞。しかも悲劇ってどーかしらと思ったけど、めっっちゃ良かった。ど素人にも分かるエミリーの歌の良さ、曲もオケも舞台装置も素晴らしかった。現代劇だし英語だし、古典オペラ苦手でもミュージカル好きな人は楽しく観られる気がする。悲劇ですが絶望で終わらないし、ミリタリ系だからって嫌煙しちゃうのも勿体ないので、鑑賞迷ってる方いたら観た方がいいよって言いたい。