矢野竜子

SELF AND OTHERSの矢野竜子のレビュー・感想・評価

SELF AND OTHERS(2000年製作の映画)
4.9
最後に肉声での呼びかけが
象徴するように「対話」の映画。
もはやドキュメンタリーとも思えない
異形のコミニュケーション装置。
眼差しの透明化によって
私たちは否が応にも被写体の眼差しと
向き合うことになるわけで。
時間と空間、媒体を超えて眼差しと
接続することの奇妙な感覚にやられる。
一体これはなんなんだろうか。
一方で対話の映画でありながら
フィルムに刻印された人以外
全くといっていいほど
人が出てこないのが面白い。
声のみであったり、
人物がおらず風景のみであったり。
ただそれはフィルムに
牛腸茂雄自身が映らないのと
同じことのように思えてならない。
そこに映っていなかったとしても
たしかにそこにいる。
不在こそがその存在を浮き彫りにする。