mh

悲しみは星影と共にのmhのネタバレレビュー・内容・結末

悲しみは星影と共に(1965年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

ユーゴスラビア(セルビア?)が舞台のホロコーストもの。
盲目の弟とその姉というユダヤ人姉弟に降りかかる受難を描く。
WW2ユーゴといえば、ウスタシャ(ファシスト。ナチスドイツにすり寄った組織。黒い制服)VSチュトニク(セルビア人が中心になった反ファシスト組織)VSチトー率いるパルチザン(のちの勝者)の三つ巴でおなじみだけど、そのあたりには一切触れない。
味方はパルチザン、悪者はナチスドイツのみにしてくれてるので話が分かりやすいが、ググりたい勢にはちょっと物足りない。しかしぼやかしたのもわかるような気もする。公開当時、ウスタシャVSチュトニクの悲惨な争いついては、触れちゃいけなかったのかもしれない。隣人同士が殺し合ったシャレにならないその対立はチトー大統領なきあと(1980年没)のユーゴスラビア戦争へとつながっていく。
この映画はなんといっても細部が素晴らしい。
柵につながれた弟(あやまって井戸に落ちないため)が、ドイツ国防軍の兵士に紐を切ってもらうも、カットが変わると家にいる。
はしけが往復するタイプの川の渡し、(男の手がないため)雨漏りする家の様子などなにからなにまで素晴らしい。
冒頭、乗ったことのない列車に思いをはせている。(弟の眼の手術のためにのるはずだった)これが、ラストの伏線になってるのが、暴力的な美しさ。
家畜用貨車に揺られながら、夢を語るのほんとやばい。
脚本にも参加している監督さんは、詩人もやっていたそうで、詩情の含有量がすさまじい。
「コルチャック先生」のあれにも匹敵する、圧倒的余韻が味わえる。
チャップリン長女の美しいことは美しんだけどどこか怪しげな風貌がまた良かった。
「自転車がなくなってる!」の一言で姉のピンチを救ったアドリブの効く弟もいいね。
数年前のTSUTAYA良品発掘にラインナップされれたようで、このたびようやく視聴した。
TSUTAYAはいよいよレンタル撤退の気配が色濃くなってきており、こういうのも減ってしまうんだなぁと思うとかなり悲しい。
ひさびさすごいの見た。面白かった。
mh

mh