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愛の調べのfreeのレビュー・感想・評価

愛の調べ(1947年製作の映画)
4.0
音楽家・シューマンと、その妻であり且つ秀でたピアニスト・クララとの、音楽家として、家族として人生を共に歩む、彼らの生涯を描いた作品。
……といっても、かなり脚色されており、所々フィクションが挟まれている。完全なるノンフィクションでは無い(シューマンが元気な時にブラームスが弟子入りしたり、ブラームスがクララに愛の告白を対面でする等)。

シューマンというと、晩年では精神的に追い詰められて幻聴に苛まれたり(「Aの音(ラの音)が止まないんだ!」)自殺未遂をしたり、クララと距離が離れてしまったりと、後年は悲壮な人生を送っているが、この作品はユーモアを交えたりと、あまり重くなり過ぎない様に描かれている。

シューマンの曲はもちろん、弟子で居候しており且つクララに好意(恋愛なのか親愛なのかは未だに意見がある)を寄せるブラームス、リストと、彼らが作曲したピアノ曲が流れるので、クラシック好きな人には楽しいと思われるw
しかも、劇中のピアノ演奏シーンでは、アルトゥール・ルービンシュタイン(←Wiki情報)とのこと。この演奏中のアテレコ(というのか?)、役者さんの方々がとても上手に指先や手を動かしており、ほっとんどズレがない。音楽の音階の位置と鍵盤の位置も正確で、まるで実演しているかのようで、素晴らしい。

◆印象に残ったシーン
・シューマン、クララ、ブラームスが、鶏を誰が捌くかで言い訳ごうごうにひと悶着し(笑)、とうとう意を決してブラームスが捌こうとした際に、鶏が卵を産み、あっ、なら捌いちゃうのは可愛そうよね♪と、皆で一件落着したシーンが好きw

・ブラームスが、少ししっとりとした短調のワルツを弾き、皆がその音楽に乗せてしっとりとしたステップを踏み、暫く弾いたところで突然、少しテンポアップした明るい長調のワルツを弾き、それに踊っている皆が笑顔になって、今度はノリノリで踊るのが好きw


・今の段階でもそこそこに実力のあるブラームスが、シューマンの子どもから、水を頂戴・レモンを入れて・砂糖も入れて・と容赦なく、無邪気に注文をされるの面白いw


・ブラームス、子どもたち、クララが明るい庭で遊んでいるほがらかなシーンから、シューマンが真っ暗な部屋で、不協和音めいた音楽を作曲しているシーンに映るのが対照的で、シューマンの不安定さがわかる。不穏な詩、突然ピリピリと怒ったり、ラ(A)の音がシミのようにこびりついて離れないんだ! と、かなり神経が荒れている様子。
そして、医者が「神経質なのも音楽家の内さ 俺にはそれがなかった」とジョークをいって場を和ませるシーンが好き。
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