Mee

ファニーゲーム U.S.A.のMeeのネタバレレビュー・内容・結末

ファニーゲーム U.S.A.(2007年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

冒頭から音楽一切ないの超怖いよ〜!
主人公家族達の顔が中々見えないのもタイトル出しの時の音楽の切り替えも怖い。
メタ表現も多用しており、特にラストは怖すぎる…
もう怖いしか書いてない笑

それはさておいて….
この映画は“暴力”を問い直す映画。
昨今のマーベルを始めとする(私はマーベル映画大好き!ここで例に出すのはわかりやすさを重視で他意はない)ヒーロー映画は暴力を振るう敵に対してこちらも暴力でしか対抗しない。
【正義】【悪を成敗する】といった美しい言葉で外見を装飾しているが、その実中身を取り出してみるとやっている事は敵と同じ暴力でしかない。
剥き出しの暴力がどれだけおぞましいのか、どんな理由があれ暴力を振るう者はそれなりの覚悟と気持ちを持たなければならないというメッセージを感じた。
そして、正義の振るう暴力は何故か必ず悪に勝ってしまうという“映画“におけるお約束を人々は現実にも持ち込んでいないだろうか。
銀行強盗犯を警察官が見事逮捕し、テレビの前でガッツポーズする我々観客はそれが当たり前であり、悪は必ず屈すると思っていないだろうか。以下劇中引用し、()を独自に意訳。

「この映画(限りなく現実を描いたもの)は全てが逆だった。予言(正義は必ず勝つ)が本当であるならば人々はそれに備えて冷静でいられるが、そうじゃなかった映画(現実)だったということだ。ケーヴィンさんは、ある日現実(必ずしも正義が勝つとは限らない)というものを知った。だから妻と娘に警告しようと考えた。問題はブラックホールのような反物質界(正義は必ず勝つと思い込んでいる人々が住んでいる世界)と現実界(必ずしも正義が勝つとは限らないと知っている人々が住んでいる世界)は行き来が困難だった。だがなんとか重力(認識の差)を克服し、2つの世界の一方が虚構(反物質界)で一方が現実(現実界)だと証明した。」

本来暴力とは強い方が弱い方をねじ伏せる、人間が蟻を気付かぬうちに踏み潰すような圧倒的なもの。
土壇場で正義が大逆転するのは映画のような虚構の現実にしか存在しない。
でも虚構こそ現実と信じ込んでいる我々には「どこかで必ず親子が立ち向かってラストは助かるはず」(=正義は必ず勝つという思考)と信じ、そして裏切られるから胸糞悪い気持ちになってしまう!
巻き戻しシーンもそうで、妻が犯人の隙を見て銃を取り、反逆した(正に虚構を信じる我々が待ち望んでいた展開!)が現実には上下関係を持つ暴力の前で弱者が強者に勝つのは到底難しく、この映画においては我々が待ち望む展開こそが“虚構”といえる事から修正する為にシーンを巻き戻すという映画の御法度ともいえる事さえ起こり得る。

暴力は見えない所で沢山起きている。
ニュースで取り上げられたり、現実に目の当たりにする暴力なんてほんの一握り。
劇中で決定的に暴力が加えられているシーンが映されないのも何だかこういう意図があるような気がする🤔
そんな巧妙に隠された暴力が時に英雄的に持ち上げられる事があるが、やっている中身は今作の犯人2人と同じ、強い者が弱い者をねじ伏せているだけに過ぎない。

しかし、私は手放しに暴力は悪だ!!と叫んでいるわけではなく、必要な暴力も現実問題ある。
ただ、自分が何をしているのかという自覚を持つ必要がある!
そして必ずしも正義が勝つとは限らない。

【参考】
http://eiga-kaisetu-hyouron.seesaa.net/article/136111442.html
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