遠島

日本一の男の中の男の遠島のレビュー・感想・評価

日本一の男の中の男(1967年製作の映画)
4.0
古沢憲吾の手にかかった植木は画面からはみ出るようなエネルギーを発散します。
話の展開がよどみなく、画面の切り替えが絶妙の演出。
やることなすことすべて上手い具合に進んでしまう現実にはありえない馬鹿話も小さなどんでん返し、起承転結の連続で飽きさせない。脚本の熟練度を存分に活かしている。
会社の得意先の変なアメリカ人社長が来日し「ニホン、ダイスキ。フジヤマ、ゲイシャ、サムライ、ハラキリ、すばらしい! ケンドー? ワオ! ミフネ知ってる」というセリフが時代を感じさせます。
ちまたではベトナム反戦運動や「日本帝国主義復活」が唱えられ冷戦の激化が表面化する中で、大きな時代感覚から超然と撮りつづ特異な才能の遺産といえましょう。

戦後強くなったのは女とストッキングと言われていました。映画にも出ているように「亭主関白」を主張する植木に上司が「いまどきそんな考えは通用しないよ」と馬鹿にします。それを豪快に笑い飛ばして「実力者はつらいねー」
つまりこの時代「女性上位」は社会通念でありそれを鼻にかけた上司や浅丘るり子のような洋行帰りに対する戦中派の皮肉が込められていて、映画館の中の多くを占めた同世代の人々の溜飲を下げています。
テレビでは「反戦」「反佐藤栄作」がお茶の間をにぎわしていた(今も似た光景)へのプロテストがあったのかもしれません。
遠島

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