1994年公開『グスコーブドリの伝記』
2012年版の記憶が薄れないうちに視聴
より原作に忠実な作りになっている。
木こりの息子グスコーブドリは寒波による
飢饉のため父母や妹と生き別れ、工場で
働き始めるが火山の噴火により工場も倒産。
農家に身を寄せ農業を学ぶ。再び飢饉が訪れ
ブドリは農学研究に詳しいクーボー博士を
尋ねると火山局での仕事を紹介される。
噴火の被害防止や人工降雨での農業支援を
通じ、ブドリは人々の役に立つ喜びを得る。
“たとえばもしも1人の命と
引き換えに世界を救えるとして
僕は誰かが名乗り出るのを
待っているだけの男だ”
ーーーMr.Children 『HERO』より
この“臆病者”の生き方を是とする
価値観の中で育ってきた私たちには
最後これ以上ないほど穏やかな表情で、
レバーを引くブドリの心境を慮ることは
なかなか難しい。
自己犠牲とは何か。
誰かのために生きるとは何か。
そんな普遍的主題に正面から挑む作品だ。
12版と異なりブドリが苦難に面し泣き顔を
見せるので前半での不幸の連続が強調され、
またブドリの“決意”についてもより明確に
示されるので、精神的には結構クる。
一方で、こちらではネリと再会できるので、
それだけはホッとする…が、ネリの口を通し
ブドリの死がより辛く、重くのしかかる。
子供時代の声がブドリもネリもぴったりで
満足だと思ったら両方高山みなみだった笑。
やはりプロ声優は素晴らしいの一言。一方、
青年期のブドリの声がやや抑揚に欠ける。
峰野勝成さんという役者?さんのようだが
あまり情報が見当たらない。アニメはプロ
声優さんに任せてこそ良さが出る。
12版にあったファンタジー要素は皆無で、
まさに1920年代の岩手県のような風景に
ブドリが自分が命を賭すことを明言する等、
より原作に近い形での映像化なので、
原作ファンの方にはよりこちらがオススメ。
登場人物にしっかり共感したいタイプの方も
明確な心理描写の多いこちらが好きかも。
一方で、ジブリのような世界観が好き、
もしくは1985年『銀河鉄道の夜』ファンは
12版がオススメということになるだろう。
映画の出来としては甲乙つけがたい。