ケロケロみん

大曽根家の朝のケロケロみんのレビュー・感想・評価

大曽根家の朝(1946年製作の映画)
4.0
敗戦直後1946年の作品。裕福な大曽根家は亡き父は自由主義。母は横浜の貿易商の娘で外国の学校(フェリスかな)を出た意識高い系。長男は戦争批判して特高に捕まり次男は画家の卵。三男は無邪気にお国を信じる学生。長女裕子は婚約者がいるが、クリスマスに出征。そこへ今でいう老害の内地勤務大佐の亡き父の弟がやってきて特高に捕まった息子を出すなど恥さらしであると娘の縁談を辞退する。以後叔父は大曽根家に入り込み「大日本帝国代表」の扱いとなり対する母娘は「戦後の新しい常識人代表」となる。
杉村春子の悲しみ、怒り、絶望、全てがこの映画を引っ張り、戦争への国民全体の怒りを代弁している。私は確かに軍事政権は悪いがそこまで追い込まれた戦前のアジアの情勢も考えたいと思う。もし戦争しなかったら日本はアジアの玄関マット化していたことだろう。
この映画で1番美しいのは冒頭のクリスマス。出征する婚約者はショパンの「別れの歌」をピアノ演奏し、悲しみにたまらず台所へ逃げる先にはやかんが待っている。やかんのお湯が沸きお茶を飲んだら彼は旅立ってしまう、切なさが一挙一動に現れる。